千代田区が地権者合意の割合を議会に“虚偽答弁”
東京・秋葉原再開発計画
伊田浩之|2021年10月14日5:39PM
【区は“虚偽”を否定】
再開発に詳しい大城聡弁護士(47歳)はこう説明する。
「高度成長期の1969年にできた都市再開発法を使う計画です。適用は、〈土地の利用状況が著しく不健全〉なことが条件ですが、近年は、当初の趣旨と異なり、超高層ビルを建てるために使われています。法の趣旨を逸脱しているのです。
仕組みとしては、低層の建物を壊して高層の建物を建てることにより、床面積が大幅に増加する。この増えた床を売却して事業費にあてるのが一般的ですね。
所有権者と借地権者、総面積のすべてにおいて3分の2以上の賛成で再開発組合ができると、その地区は再開発以外の道は事実上閉ざされてしまいます。反対でも強制的に土地や借家を取り上げられてしまうのです」
千代田区議会で環境・まちづくり特別委員会副委員長を務める小枝すみ子区議(57歳)が憤る。
「5月17日の企画総務委員会で区は『地権者31筆のうち同意は26』と説明しました。3分の2を超えたら再開発していいとは思いませんが、そこまで住民の考えが熟していれば再開発を進める判断があってもやむを得ないと感じていました。
しかし、『明らかに事実無根』とする陳情が出て、区に調べさせると、賛成の割合が下がったのです。区の集計結果に疑いがあり、議員立ち会いの下で集計をさせると、さらに賛成割合が減る。
しかも都市再開発法の基準ではなく、区の独自基準で算出していたことすら判明。9月30日の委員会答弁ではとうとう、賛成は権利者の54・1%、面積の56・2%にすぎないことがわかりました。これでは再開発などできるわけがありません。一人一人の地権者の財産や商売がかかっているのに、見通しを誤らせる“虚偽答弁”を繰り返してきたのです。
再開発計画の総額は約854億円で、区からも85億円ぐらいは交付金を支出することになる。また、対象地域には区の施設がありますが、区民の財産である区の土地を再開発でビルの“床”と交換するのは前代未聞です。区の答弁がいい加減なのは、議会軽視であり、ひいては区民軽視です」