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入管問題も選挙の争点に! 
【対談】階猛・立憲民主党前衆議院議員×中島岳志・東京工業大学教授

階猛×中島岳志|2021年10月18日1:31PM

中島岳志(なかじま たけし)・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、本誌編集委員。1975年、大阪府生まれ。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。北海道大学大学院准教授を経て、2016年から東工大へ。著書に『「リベラル保守」宣言』(13年、新潮社)、『自分ごとの政治学』(20年、NHK出版)、『こんな政権なら乗れる』(21年、朝日新書)など。

【外国人の権利保障はなぜ「自分ごと」なのか】

 入管問題は衆議院選挙の争点になるべきですし、しっかりと争点化していかなければなりませんね。廃案は、マイナスがゼロに戻っただけのことですので、これからプラスに、つまり入管行政を改善していかなければいけません。そのためにも、私はこの問題をより普遍的な問題として取り上げたいと思っています。多くの人が、入管の話をする時に、「他人ごと」として考えがちですが、「自分ごと」として考えていく必要があります。

どういうことかというと、一つは、人権の問題です。人権は日本国憲法が最も重要な価値としていることであり、個人の尊厳を守ることは、戦後日本の柱となってきた価値です。統治機構は人権規範に奉仕しなければなりません。入管は統治機構の一つです。なのに、人権を蹂躙している。これは明確に憲法違反です。

二つ目は外国人労働者問題です。日本は人口減少によって働き手が少なくなり、海外の人たちに補ってもらわなければならない状態です。しかし、外国人を安い賃金で長時間、都合よく使っている。そして、「必要なくなったら帰ってください」という姿勢で、帰らなければ入管に収容して人権を無視した扱いをする。日本が先進国というならば、海外からきてくれた人たちには敬意と感謝を持って接するべきです。彼らが日本に残りたいと言ったら、「ありがたい」と思って、残ってもらえるようにしなければなりません。

中島 そうした問題を考える上で、今年3月、名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(享年33)が死亡した事件について、見ていく必要があると思います。この間、来日したウィシュマさんの妹たちが真相究明を求め、入管の監視カメラで撮影されたウィシュマさんの生前のビデオ映像の開示も求めてきました。入管庁(出入国在留管理庁)は、国会の会期中はずっとビデオ開示を拒んできたものの、8月になって、約295時間あるビデオを2時間に編集し、その一部を遺族に見せました。そして今月に入って「ビデオ全面開示へ」という報道がありましたが、どういういきさつがあったのでしょうか。

 報道では「全面開示」とされていましたが、実際は「全面開示」とは程遠い状態です。部分的ですが開示範囲が拡大されたのは、弁護団の頑張りによるところが大きかった。弁護団は、ウィシュマさんの死についての日本政府の責任を問う国家賠償請求訴訟を提起する予定で、その訴えを起こす前に、証拠保全手続きをやりました。これは裁判所の職員が入管に踏み込んで、証拠書類やビデオを押さえることができるのですが、入管は当初、検察庁に原本を提出したので、もう手元にビデオは存在していないと言い訳したそうです。しかし、ダビングしたものがあるだろうと迫り、開示させたそうですが、約295時間もあるものをすぐに全部見る時間を取ることは難しく、弁護士らは一部しか見ることができなかった。そのため、残ったものを見たいのでDVDを提出してほしいと言ったそうですが、それには応じなかったようです。

全面開示させるためには、裁判の過程でビデオを証拠として入管側に出させる必要があります。岸田文雄内閣になってビデオの開示に積極的になったとの勘違いがあるようですが、まったくそのようなことにはなっていません。政権のあり方、体質はまったく変わっていません。

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