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『WiLL』出版社に賠償命令 
安田純平さんの名誉を毀損

佐藤和雄|2021年10月19日4:38PM

筆者の取材に応じる安田純平さん。2021年1月、東京都内にて。(撮影/本田雅和)

シリアで40カ月間、武装勢力に拘束されたジャーナリストの安田純平さんに対する根拠なき中傷報道が、違法な名誉毀損と認定された。安田さんが、出版社「ワック」(東京都千代田区)の発行する月刊誌『WiLL』の記事で名誉を傷つけられたとして、同社に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10月6日、東京地裁で言い渡された。五十嵐章裕裁判長は記事について「原告の名誉を毀損するものであって、不法行為にあたる」として、同社に33万円の支払いを命じた。

判決によると、対象となったのは2018年11月発行の『WiLL』(19年1月号)に掲載されたユーチューバーのかずや氏による連載コラム「KAZUYAのつぶやき」だ。「“イスラムダンク”安田純平の謎」と題された同号記事の中で、かずや氏は「謎だらけで、まさか中東ではよく行われているという人質ビジネスでは? と邪推してしまいます」と書いた。

判決はこの部分について「原告が身代金名下に金員を得る側に加担していたとの事実を適示するもの」と認定した。ただ、その表現が「推量の形式を取った婉曲的なものである」などの理由から損害賠償額を大幅に下げた。

判決について安田さんは、筆者の取材に次のように述べた。

「自分が言論の仕事をしているので、言論で反論すれば良いと思っていたが、反論しても結局、デマと反論が残るだけ。そしてデマの方が面白いので、デマが広がっていく。しっかり反論して事実が伝わる、という社会では、もはやなくなっている。日本社会の言論空間に絶望して裁判を起こした。勝ったことは良いが、金額は少なく、誹謗中傷に対する抑止効果になっていないのが残念だ」

一方、ワック社に取材の電話を入れ、判決への見解を聞いたが応対者は「『回答を控えさせていただいています』というのがコメントです」と述べるばかりだった。

(佐藤和雄・編集部、2021年10月15日号)

 

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