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選択的夫婦別姓反対派議員の主張を家族法研究者が論破
二宮周平|2021年10月22日6:35PM
高市早苗議員ら自民党国会議員50人が、自民党籍を持つ全国42道府県議会の議長あてに「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」を採択しないよう求める文書を今年1月30日付で送っていた。この文書で、制度導入に反対する理由として挙げている主張は一見もっともなようだが、本当にそうなのか。家族法の研究者・二宮周平氏が解説する。
【家族単位の社会制度の崩壊?】
主張1 戸籍上の「夫婦親子別氏」(ファミリー・ネームの喪失)を認めることにより、家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある。
〈解説〉1947年12月の改正民法は家制度を廃止し、家族関係を、夫と妻、親と子、親族相互の個人的な権利義務関係とした。憲法は、婚姻及び家族に関する法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならないと定める(24条2項)。民法も憲法も家族を単位としていない。したがって、家族に関する定義規定も存在しない。
例えば、所得税の配偶者控除、相続税の減免は、婚姻関係や相続権を根拠とする。育児介護休業の取得や健康保険の利用、遺族年金の受給権も親子関係、被扶養者、配偶者等を根拠とする。生活保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるが、世帯構成員は居住及び生計をともにしている者を指す。家族を単位とする社会制度も存在しない。存在しないのだから、崩壊もありえない。ちなみに民法を含めてこれらの利益や権利は氏が同じことを要件としていない。「夫婦親子別氏」は権利義務と関係がない。
【「子の氏の安定性」が損なわれる?】
主張2 これまで民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある。
〈解説〉「子の氏の安定性」が子の氏が変わらないことだとすれば、民法は夫婦同氏だから、婚姻に際して夫・妻のどちらかは子ども時代の氏が変わる。結婚改姓した者が離婚し旧姓に復した場合(離婚復氏)、民法では子は旧姓に復した親の氏に変更することができるから、民法は氏が変わることを認めている。父母と同じ氏を称することが「子の氏の安定性」だとすれば、結婚改姓した子と実父母の氏は異なるし、父母が離婚した場合、父母の一方と子の氏が異なることがある。民法は「子の氏の安定性」など守っていない。
選択的夫婦別氏制度を導入すると、子の氏が決まらないことがある、これが「子の氏の安定性」が損なわれることだとすれば、1996年の法制審議会答申「民法の一部を改正する法律案要綱」では、別氏を選択した夫婦は、婚姻の際に子の氏を定めておくので、出生時に子の氏は定まる。子の出生時に父母の協議で子の氏を定めるとした場合も、協議が可能だと思うが、かりに協議が調わないときには、婚外子の場合と同様に母の氏とするなど、どちらの氏にするか定める規定を設ければ対応できるのだから、「子の氏の安定性」に反することはない。
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