JR東海が開始したリニア工事に田園調布の住民が緊急抗議
樫田秀樹|2021年10月27日6:38PM
【米国での活動に学ぶ】
JR東海は調査掘進に6カ月、以後は月に400メートル掘進すると説明している。これをもとに計算すれば、北品川から約8キロ離れた田園調布には約2年後にはマシンが到達することになる。
住民の会は18年夏に設立。住民との交渉不要でトンネル掘削ができるという「大深度法」の違憲性と大深度でのシールド工法の危険性を訴えてきたが、その後に起きた外環道工事の陥没事故で不安は現実のものとなった。今年7月には住民の会が、陥没事故前に決めていた工事差し止め訴訟を原告24人で東京地裁に提訴。10月26日には第1回口頭弁論が開かれる。
原告団は今、一般にはまだあまり知られていないリニア問題の周知を図るために、米国でのリニア反対運動と連携しようとしている。米国でもリニア実現をめざすJR東海はロビー活動を現地のTNEM社に委託。同社が設立した鉄道会社BWRR社は、ワシントンDC―ボルチモア間の約65キロを結ぶリニア(米国ではマグレブと呼ぶ)建設計画を立ち上げた。だが今年8月下旬、BWRR社はボルチモア市でリニア駅建設のために土地収用法による土地獲得を求めた裁判に敗訴した(米メディア『Baltimore Business Journal』8月30日付)。
背景には自然破壊や地域破壊に反対する市民運動があった。そのアピール動画では、地域の老若男女が参加して「ストップ・ザ・マグレブ・トレイン」とプラカードで訴える姿も映し出されている。住民の会は同様の短編動画を制作し、10月17日に公開した。
(樫田秀樹・ジャーナリスト、2021年10月22日号)