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東電株主訴訟の裁判官、福島第一原発に初の立ち入り視察

添田孝史|2021年11月5日1:01PM

東京電力福島第一原子力発電所に10月29日、東京地裁の裁判官たちが入り、津波対策は可能だったかなどの状況を視察した。原発事故を巡りさまざまな裁判が起こされているが、担当する裁判官が原発敷地内に入ったのは初めて。事故から10年半、検察や警察の強制捜査さえなかった大事故の現場が、ようやく裁判官の目で検証されることになった。

視察したのは、東電株主代表訴訟を担当する東京地裁の朝倉佳秀裁判長ら裁判官2人と代理人弁護士ら。この訴訟では、勝俣恒久元会長ら旧経営陣5人に対し、事故は防げたのに適切な対策をせず会社に損害を与えたとして、東電の株主が損害賠償を求めている。

現地視察は「図面や写真などもあるけれども、現場の状況を立体的に理解したい。そのために現地に行ってみたい」との朝倉裁判長の意向で実施された。原告側の海渡雄一弁護士によると、裁判長は「現場で見ると迫力が全然違いますね」などと述べていたという。

視察には6時間近くかけた。1~4号機を見渡せる高台から始まり、各号機の海側から近づいて津波の浸水経路を確認したり、海辺の埋立地(海抜4メートル)に下りて被害の実態を確かめたりした。

海渡氏によると、裁判長らの関心は「事前の対策で津波を防ぐことは可能だったか」にあったようだ。事故の際、どこから建屋に水が入ったのかを確かめるために、非常用ディーゼル発電機の吸気口、大物搬入口、作業員出入り口などを回り、図面と照合しながら東電の説明を聞き、写真を撮った。

「防水扉への取り換えが必要な出入り口などは意外に小さく、数も少ない。対策工事は容易だったことは理解してもらえたのではないか」と海渡氏は語る。

これまで帰還困難区域に裁判官が入ったことはあるが、原発敷地内への立ち入りはなかった。今回の視察は、裁判官に事故の過酷さを体感し、検証してもらう突破口となったと原告側は評価する。

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