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小川淳也立憲民主党議員インタビュー
「この国を変えるには人類史的、文明史的な転換が必要」
「政治のターゲットは社会保障」
2021年11月10日7:04PM
【国家戦略室とモラル崩壊】
――旧民主党政権当時、首相直属の「国家戦略室」をつくり、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定しようとしましたが、なぜ、うまくいかなかったと思いますか。
国家戦略室は、もう少し機能させることはできたと思います。ただ、法律ができませんでした。参議院がねじれたことで、法律改定事項が野党自民党の批判を受けて通らなくなりました。きちんと法律化できていれば、もう少しましだったと思います。
民主党が政権交代したとき、麻生太郎政権の莫大な補正予算があり、要不要の予算の仕分けが最初の仕事でした。しかし実際に、仕分けするのに何が不要で、何が不要じゃないかの「ものさし」が必要なんです。そのときに客観的で絶対的な「ものさし」が用意できればいいのですが、現実にはそれはなく、相対的な「ものさし」しかない。可能性があるとすれば、予算の制約しかありませんでした。
――見直す予算は莫大でしたね。
予算のうち何割くらい見直すのかという全体方針が見えないままに終わりました。そうすると、まじめにやったところと、そうでないところの差があからさまに出て、まじめに予算削減をやったところにしわ寄せがきました。まじめにやるとバカをみると感じた人もいて、次年度に概算要求を出し合ったときは、要求額が随分膨らみました。基本方針を描けなかったことによるモラル崩壊というわけです。
国家戦略室をつくったのに司令塔機能が十分に発揮されなかったのです。結局、司令塔にふさわしい仕組みと、リーダーシップが適切に組み合わされないと、思うような機能の発揮は期待できません。
――民主党政権の挫折なり失敗を通して何を学んだのですか。
民主党政権の挫折をしっかり引き取って、総括をして肥やしにしていますという覚悟を見せる必要があるという気がしています。あのときの国民の失望が、安倍長期政権につながっています。政権時代の反省の上に立って、新たな血も入り、大きなテーゼを打ち出すことができると野党第一党としての存在感は随分変わってくると思います。
【ライバルとの闘い】
――小川議員ご自身の最大、唯一のライバルと言える平井卓也議員(注)がデジタル改革担当大臣として入閣し、メディアでの露出度を高めています。次の総選挙で苦戦されると思いますが、この強敵にどう挑まれますか。
同じ香川県民としていい仕事をしていただきたいと思います。ただ、私の政治家としての立場から考えると、非常に試練が続く中での緊張があります。平井家の地盤はお祖父様の代から約70年間国会に議席をもっているわけです。地元の新聞社やテレビのネットワークもあり、情報統制というか、私のことはほとんど報じられないか、報じられても非常に辛口です。一方の平井大臣は、大臣になられたら地元では連日、ものすごい報道量です。平井議員は、70年の地盤と、新聞社、テレビ、財界に対する圧倒的な影響力があります。
氷山で言うと、水面上で見えるものより、はるかに大きな氷が水面下にある。それが、まさに地盤や基盤であり、そこと闘ってきているわけです。ですから、私が闘ってきた実像なり本質は変わりません。妙策はあるかというと、ありません。これまでコツコツやってきたことをやり続ける以外にないと思っています。
――映画に戻ってしまいますが、前回総選挙で比例復活当選したにもかかわらず、小選挙区で勝たなければ発言力をもてないと嘆いていたシーンが印象的でした。影響力が違うんだ、という言葉を覚えています。議員同士の意識はそんなにも違うのでしょうか。発言などに影響力が出るのでしょうか。また、それで「出世」がそれほど左右されるのでしょうか。
一人の国会議員として安倍さんと対峙するときに、自分は小選挙区だとか比例だとか引け目を感じたことは一度もないです。そんなこと言っている場合じゃなくて、大事な国会の一議席を預かっているわけですから、野党としての仕事を果たさなければいけません。
一方で、党内で主要な役割を果たすためには、どうしたらいいか。簡単に言うと、党首の仕事は、党内向けには仲間を選挙に勝たせることなんですね。
――そうですか。
であるにもかかわらず、当の本人が勝っていないということは笑えないパラドックスになってしまいます。私なりの折り目正しさから言うと、まず選挙に勝って、その上で党勢拡大に向けて貢献するというのが筋道だと言えます。