ウィシュマさん死亡事件、殺人容疑で名古屋入管幹部ら刑事告訴
2021年11月22日8:55PM
【ビデオ開示と遺族の思い】
今回の刑事告訴には、ポールニマさんと帰国したワヨミさん2人の妹の強い思いもあった。
10月1日、刑事告訴とは別に準備中の国家賠償請求訴訟での証拠保全手続きで、名古屋入管がウィシュマさんの容体を撮影した約295時間分の監視カメラ動画のうち、弁護団が指定した箇所の約1時間30分を、名古屋地方裁判所で訴訟当事者が見る機会があった。
ポールニマさんは「ビデオには報告書にはない事実や、文章では分からない姉の姿や声が記録されている。見るのはとてもつらいが、姉が名古屋入管に殺されたということが、誰でも分かる。きちんとした措置をしなかった入管職員や幹部に責任がある。検事さんはその事実を見て捜査、起訴してほしい」と報道陣に訴えた。
刑事告訴翌日の10日、古川禎久法務大臣は定例記者会見で今回の刑事告訴について問われ「捜査機関の活動内容に関わる事柄なので、法務大臣として所感を述べるのは差し控える。入管への捜査があれば、当然、適正に対応する」と述べただけだった。
ポールニマさんは、古川法相との面会を求め、また10月12日付で岸田文雄首相あてに、ビデオの全面開示と事件の真相究明、再発防止を求める手紙を送ったが、まだどちらからも返答はない。
(西中誠一郎・ジャーナリスト、2021年11月19日号)