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衆院議員の約6割が核兵器禁止条約に前向き 「障害は外務・安保官僚」

2021年11月26日9:14PM

【与党・閣僚にも認識拡大 岸田首相後ろ向きの理由】

 しかし、10日発足の第2次岸田内閣の閣僚の中にも古川禎久・法相や斉藤鉄雄・国土交通相が条約に賛同。鈴木俊一・財務相、後藤茂之・厚生労働相、

 今年1月に発効した核兵器禁止条約に対する国会議員の姿勢を調べている市民団体「議員ウォッチ」(川崎哲代表)などが11月15日までに集計したところ、今回の総選挙で当選した465人の衆院議員のうち153人(33%)が同条約に賛同を示した。戦争被爆国として日本の参加・不参加が注目されている来年3月の第1回締約国会議には、少なくとも「オブザーバー参加すべきだ」と表明した議員を加えると、同条約に前向きに取り組む姿勢を示した議員は計263人(57%)と6割近くになることがわかった。

 2019年1月に活動を開始した議員ウォッチは、核廃絶に取り組む学生団体「KNOW NUKES TOKYO(KNT=ノー・ニュークス・トーキョー)」とともに、広島、長崎や首都圏などで活動する学生ボランティアを中心に、国会議員への面会や文書・電話による質問・要請を通し、条約や「ヒバクシャ国際署名」への賛同依頼、賛否確認などをしてきた。

 今回の総選挙では、全立候補者1051人にもアンケートし、半数近い494人(47%)から「条約賛同」との回答を得た。10月31日の開票後、当選者を対象に、一部はNHKのアンケートへの回答結果も加えて集計し直した。

 その結果、衆院議員では賛同議員が改選前の28%より5ポイント上昇。衆参両院の国会議員全体でも708人中、条約に賛同が233人(33%)、締約国会議へのオブザーバー参加への支持も加えると346人(49%)で約半数にのぼっていた。賛否不明の回答や未回答を除いた有効回答は衆院で314人(有効回答率68%)、両院全体で399 人(同56%)だった。

 党派別集計では、条約への賛同は野党に多く、共産、社民、れいわ新選組の議員は100%、立憲民主が86%。一方で国民民主は43%、維新はわずか9%。与党は自民がさらに少ない8%、公明も国民より少ない40%だ。

 自称「広島出身」の岸田文雄首相は核兵器廃絶に「全力を尽くす」、核禁条約を「大変重要な条約」などと言いつつ、「(条約に賛同しない米ロなどの)核兵器保有国を変えないと現実は変わらない」として条約を批准しない方針を示し、オブザーバー参加については賛否さえ明らかにせず、国会でも否定的な答弁を繰り返す。

【与党・閣僚にも認識拡大 岸田首相後ろ向きの理由】

 しかし、10日発足の第2次岸田内閣の閣僚の中にも古川禎久・法相や斉藤鉄雄・国土交通相が条約に賛同。鈴木俊一・財務相、後藤茂之・厚生労働相、萩生田光一・経済産業相、山口壮・環境相はオブザーバー参加に賛同している。

 議員ウオッチのリサーチャーでお茶の水女子大学4年の内藤百合子さんは、選挙前から衆院議員全員に条約への賛否を問うハガキ調査など様々な働きかけをしてきた。「与党安定、野党敗北」などの報道もあるが、「少なくとも核兵器に対する姿勢については前向きの認識が広がり、オブザーバー参加が衆議院で過半数となったのは大きな成果」と強調。KNT共同代表で慶応大学3年の高橋悠太さんは「選挙では外交・安保政策として核禁条約を重要な争点にするよう訴えた。賛同する議員を選ぶ活動をする中で『核の傘』を問題にする自民議員も出てくるなど、議論が成熟する土台作りはできた」と手ごたえを語る。

 政府側とも交渉していた川崎代表は岸田首相について、「これまでの主張や衆院議員の過半数の声を考えれば長期的には核禁条約への加盟、短期的にはオブザーバー参加ぐらいは言えていいはず」とするが、後ろ向きになっている理由については「明らかに外務省北米局の日米安保担当者、〝安保官僚〟と言われる外務官僚が国家安全保障局とともに壁になっている」と分析した。

 米国のバイデン政権が検討中と伝えられる「核の先制不使用宣言」にさえ、反対を唱える日本の官僚が、ここでも大きな障害になっているようだ。

(本田雅和・編集部、2021年11月19日号)

・経済産業相、山口壮・環境相はオブザーバー参加に賛同している。

 議員ウオッチのリサーチャーでお茶の水女子大学4年の内藤百合子さんは、選挙前から衆院議員全員に条約への賛否を問うハガキ調査など様々な働きかけをしてきた。「与党安定、野党敗北」などの報道もあるが、「少なくとも核兵器に対する姿勢については前向きの認識が広がり、オブザーバー参加が衆議院で過半数となったのは大きな成果」と強調。KNT共同代表で慶応大学3年の高橋悠太さんは「選挙では外交・安保政策として核禁条約を重要な争点にするよう訴えた。賛同する議員を選ぶ活動をする中で『核の傘』を問題にする自民議員も出てくるなど、議論が成熟する土台作りはできた」と手ごたえを語る。

 政府側とも交渉していた川崎代表は岸田首相について、「これまでの主張や衆院議員の過半数の声を考えれば長期的には核禁条約への加盟、短期的にはオブザーバー参加ぐらいは言えていいはず」とするが、後ろ向きになっている理由については「明らかに外務省北米局の日米安保担当者、〝安保官僚〟と言われる外務官僚が国家安全保障局とともに壁になっている」と分析した。

 米国のバイデン政権が検討中と伝えられる「核の先制不使用宣言」にさえ、反対を唱える日本の官僚が、ここでも大きな障害になっているようだ。

(本田雅和・編集部、2021年11月19日号)

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