関西電力旧経営陣9人、金品受領の特別背任など不起訴
2021年11月26日9:19PM
関西電力旧経営陣9人が、原発立地の福井県高浜町の元助役から多額の金品を受領したり、役員報酬減額分を密かに補填されたりしていた問題で、大阪地検特捜部は強制捜査をしないまま11月9日、「嫌疑不十分」で全員不起訴にした。市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が会社法違反(特別背任、収賄)などの疑いで刑事告発を呼びかけ、告発状は昨年10月受理された。
告発人は5000人以上。代理人の河合弘之弁護士は緊急記者会見で「強制捜査で資料を押収すれば起訴につなげられた。不起訴処分は戦後最大の経済犯罪を闇に葬る行為だ」と非難。海渡雄一弁護士は「検察審査会への速やかな申立で強制起訴に追い込み、腐敗の構造を暴きたい」と述べた。
事件発覚の発端は2019年9月の共同通信の報道。高浜町の森山栄治元助役(故人)の関連会社に国税当局の税務調査が入り、押収されたメモ類やその後の調査や報道で、関電の八木誠前会長ら歴代幹部70人以上に森山氏から30年以上にわたり「原発マネー」とみられる金品3億円以上が流れていたことがわかった。
告発内容は、関電取締役が(1)事前の情報提供や発注約束を伴う不適正な金額で工事を発注し、会社に損害を与えたという特別背任罪(2)森山氏からの金品受領で修正申告や追加納税となった者に対する納税分の追加補填をしたという業務上横領罪(3)福島原発事故後の収支悪化を受けて減額した役員報酬分2億5900万円を補填したという特別背任罪――などの疑い。
森山氏が19年3月に亡くなっていて事情聴取できないなど、捜査上の困難はあるが、すでに国税の調査や関電の第三者委員会の報告書でも(1)森山氏が特定業者への受注を強引に要求し、関電が応じた例が多数ある(2)役員報酬補填も退職後に「嘱託報酬に仮装した悪質な所得隠し」――などと認定されているだけに、告発側は「森山案件は長期間、高額に及んでおり、違法性は明らか。不起訴は到底、納得できない」と反発している。
関電は3・11後もいち早く大飯原発を再稼働。その裏で地域ボスの関連会社に工事を発注。役員はそのボスから収賄して私腹を肥やし、工事の原資は3・11後に値上げされた公共料金――という構図だ。
(本田雅和・編集部、2021年11月19日号)