奨学金、機関保証の異様に高い延滞金
若者から搾取する「日本学生支援機構」
2021年12月6日8:16PM
支払能力を無視した違法な「繰り上げ一括請求」を繰り返す日本学生支援機構。近年増えている機関保証制度の利用者も“収奪”の標的にされている。
Tさん(24歳、2014年の取材当時)が関西の有名私立大学を卒業したのは11年春。在学中の4年間で月額6万5000円、計約300万円の「奨学金ローン」を日本学生支援機構(以下、支援機構)から借りた。無利息の「第一種」である。
奨学金ローンには「保証人をつける」「機関保証制度を使う」という2種類のやり方がある。親に頼りたくなかったTさんは後者を選んだ。毎月1000円〜2000円程度の保証料を保証機関に支払い、返済困難になった場合は本人に代わってそこが立て替えて払う(代位弁済する)仕組みである。支援機構が契約する保証機関は公益財団法人日本国際教育支援協会(以下、国際協会)だ。
成績優秀で卒業したTさんだが就職には失敗する。アルバイトを掛け持ちしながら引き続き就職先を探した。奨学金ローンの返済が月に約1万5000円。しかし月収10万円台の不安定な収入では返済に回す資金の余裕はなかった。
震災の影響もあって就職活動は難航をきわめた。焦燥感が募るTさんの元に国際協会から手紙が届いたのは卒業から3年近く過ぎた14年2月下旬。内容を見て驚いた。
●代位弁済通知(一括弁済請求書)
(略)あなたが独立行政法人日本学生支援機構から貸与を受けた奨学金の残債務について、協会が機構に対して代位弁済を履行したことを通知します。
つきましては、下記代位弁済日をもって協会が債権者となりましたので、代位弁済金額を下記のとおりお支払いください。
・代位弁済日:平成二五年(13年)一二月二七日
・請求額(代位弁済額):三〇八万八四五八円(元金三〇五万二〇〇〇円/延滞金三万六四五八円)
・支払期限:平成二六年(14年)三月二五日
Tさんの延滞期間は2年半。未払金は約50万円にすぎない。それなのに300万円以上も請求されたのはなぜか。
理由は、代位弁済に先立ち、支援機構が「繰り上げ一括請求」を行なったからだ。実はTさんには今回の請求の少し前に支援機構からも請求書が届いていた。返還期日が来ていないものを含めた全額約300万円を払えという。これが「繰り上げ一括請求」と呼ばれる貸しはがしである。生活に追われていたTさんはつい放置した。すると支援機構は国際協会に対して同額の代位弁済を求める手続きをとった。国際協会は代位弁済を実行。その後「求償権行使」として約300万円の支払いをTさんに請求してきたというわけだ。
この支援機構による一括請求の違法性は明らかだ。日本学生支援機構法施行令によれば、一括請求は「支払能力」がある場合にしかできない(4月2日号参照)。Tさんに「支払能力」はない。