奨学金、機関保証の異様に高い延滞金
若者から搾取する「日本学生支援機構」
2021年12月6日8:16PM
【異様に高い利率の「理由」】
取材を通じて筆者は強い疑問を覚えた。返還猶予を適用すればTさんは返済を続けることができる。それを一括請求と代位弁済によって破産に追い込んだのだ。
支援機構は、保証人を利用している場合は支払督促や訴訟を起こして公開の法廷で取り立てる。一方、機関保証の利用者については代位弁済で全額回収する。現在のところ国際協会が訴訟を起こすことは稀だから、外からは見えづらく、取材が難しい。
だが強引な取り立てが多発していることは想像に難くない。国際協会の資料によれば代位弁済額は15年度の約153億円(7168件)から19年度は約272億円(1万3072件)と増加した。これに対し保証料収入は200億円前後で横ばいだ。19年度は収入(約208億円)より代位弁済による支出が約70億円も多い(図表参照)。同年度の回収額は約44億円。奨学金ローンの返還期間は20年以内だが、機関保証制度の導入は04年。まだ20年を経ていないから、ほとんどの例で繰り上げ一括請求がなされているとみてよい。
国際協会のやり方で特にひどいのが延滞金の利率だ。支援機構の延滞金は14年4月以降の発生分について第一種(無利息)が2・5%、第二種(利息つき)が5%と、従来の半分。20年4月以降は、さらにその半分に下げられた。しかし保証機関のほうは、現在も年10%と異様に高い。しかも支援機構の時についた延滞金をも「新元本」に繰り入れて延滞金10%をかける。「延滞金」に「延滞金」を課すというがめつさだ。
国際協会の説明はこうだ。
「代位弁済が行われると、個人信用情報機関に代位弁済情報が登録され、クレジットカード、自動車や住宅ローン等の利用に厳しい制約を受けることがあります。そのため、極力、代位弁済とならないようにする必要があります。また、機関保証は人的保証のように連帯保証人や保証人からの協力が得られないため、本人のより強い返還意識が求められます。遅延損害金の利率を10%とすることで、結果として本人が代位弁済となることを避けるといった抑止効果や本人の返還意識を高める効果が考えられることから、遅延損害金の利率は10%から変更しておりません」(4月8日、文書による回答)
意味不明だ。代位弁済を抑制したいのであれば支援機構の違法な一括請求にもとづいた代位弁済請求自体を拒絶すべきだろう。
なお「延滞金10%」の言い訳として国際協会はもう一つ、実際には基本的に延滞金を課していないのだと釈明する。しかし運用基準の開示を求めると、法的義務がないとして拒否した。
独立行政法人日本学生支援機構法案成立の際の附帯決議(03年6月)は次のように定めている。
「機関保証制度の創設に当たっては、人的保証との選択制とするとともに、奨学生の経済的な負担等に対する教育的配慮を行い、適正な運用に努める」
違法な一括請求に加担し、高額の延滞金を可能とする今のやり方が「教育的配慮」をした「適正な運用」とはとても思えない。(つづく)
(三宅勝久・ジャーナリスト、2021年5月14日号)