ジャーナリズム・文化, 人権, 社会
民族差別を煽る書き込み
投稿者特定し賠償請求
2021年12月9日3:43PM
「私が朝鮮人で、朝鮮人の女だから標的にしたのです」――川崎市の在日コリアン3世、崔江以子さん(48歳)は11月18日、インターネット上で5年近く崔さんを中傷し、民族差別を煽る書き込みをしてきた「ハゲタカ鷲津政彦」こと「北関東在住の40代の男」に対し、慰謝料など305万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁川崎支部に起こした。日本社会のマイノリティーの中のさらに弱者を狙うヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返す男の動機を、崔さんは記者会見で冒頭のように分析した。
崔さんは同市桜本地区で韓国・朝鮮人と日本人が互いの文化や歴史を学びながら共生社会をめざす公設の「ふれあい館」の館長を務める。2015年ごろから同地区に多く暮らす在日コリアンを対象にしたヘイトスピーチ・デモが頻発。崔さんは実名で公然とこれに抗議してきた。16年5月には、ヘイトスピーチ解消法が成立。6月初旬には崔さんら市民の抗議で排外主義者によるデモを中止に追い込むこともできた半面、崔さんへのネット上のヘイトも急増した。
訴状などによると、16年6月、自称ハゲタカが自らのブログ「愛する日本国を取り戻す?」で「崔江以子、お前何様のつもりだ?」と題して投稿。「日本国に仇なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」などと書き、ヘイト解消法上の「差別的言動」をした。16年9月には、法務省人権擁護局もこの投稿の違法性を認めて削除要請。ブログ管理会社もすぐに削除した。
しかし、ハゲタカはそれを逆恨みし、ツイッターなどで崔さんについて「差別の当たり屋」「被害者ビジネス」などとさらなる誹謗中傷を開始。弁護団はこちらは名誉毀損や刑法上の侮辱罪に当たるとして、ネット上の発信者情報開示訴訟を重ね、ハゲタカの身元を特定し、提訴に至った。崔さんは「差別は違法だとのしっかりした判決を得て、ヘイトに怯える子どもたちに『大丈夫だよ』と伝えたい」という。
(本田雅和・編集部、2021年11月26日号)