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玄海原発運転差し止め訴訟 控訴審は避難計画問題に焦点
2021年12月10日2:00PM
九州電力の玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)をめぐり、市民団体が中心となって国と九電を相手取り、原子力規制委員会による許可の取り消しと運転差し止めを求めた二つの訴訟の控訴審第1回口頭弁論が11月10日、福岡高裁であった。原告側は、水戸地裁が今年3月、避難計画の不備を理由に東海第二原発の運転差し止めを命じる判決を出したことを踏まえ、控訴審では玄海原発に関する避難計画について「防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行しうる体制が整えられているというにはほど遠い」と新たな主張を展開した。
訴訟を起こした中心的な団体は「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)。今年3月の佐賀地裁判決は「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準であると判断できる」などとして、原告側の請求をいずれも退けた。
控訴審第1回口頭弁論で原告側は、唐津市在住で薬剤師の北川浩一さんと原子核物理学が専門の佐賀大名誉教授の豊島耕一さんが意見陳述した。北川さんは自宅が原発から12キロメートルの距離にあり「放射能漏れから30分後には被曝が始まる。放射能被曝強要は犯罪であり人権侵害だ」と訴えた。
豊島さんは、玄海原発が放射能のトリチウムを2012年までの11年間で累積826兆ベクレル放出しており、「玄海原発が白血病多発の原因である疑いがある」と指摘。玄海町が1973年から2010年の間、住民検診を実施していながら結果を公表していない問題について触れ、「トリチウムのリスクについても重要なデータとなりうるので、一日も早く公表すべきだ」と強調した。
新しい争点となった避難計画について裁判所がどう判断するか。玄海原発から約30キロ圏内には20もの離島(架橋された離島を含む)が点在している。
(稲垣美穂子・フリーライター、2021年11月26日号)