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ラーメン店運営「大勝軒TOKYO」を元店長が提訴
「スタンガンを顔面に」
東海林智|2021年12月20日9:11PM
【「名ばかり管理職」の問題】
男性は、ユニオンに加入し、団体交渉で不払い分の支払いなどを求めたが、会社側代理人は、男性は残業代を支払う必要のない「管理監督者」であるなどと主張。ハラスメントも否定し、残業代の支払いに応じなかったという。
管理監督者には、いつ仕事に出ていつ帰るかを自分で決める出退勤の自由や会社の重要な決定事項に関与すること、相応の賃金を得ていることなどの要件が必要とされる。飲食店業界では、残業代などの支払いを免れるため管理監督者扱いする「名ばかり管理職」が長年問題とされている。男性の代理人の岸松江弁護士は「出退勤の自由がないのはもちろん、基本給以外の役職手当などもまったくない。アルバイトの採用権限もなく、管理監督者には、まったく当てはまらない」と説明した。正社員にはタイムカードが存在せず、岸弁護士は「まともな時間管理がされておらず、初めから残業代を払う気がなかったのだ」と指摘する。
首都圏青年ユニオンの事務局次長の尾林哲也さんは「飲食店業界では人手不足もあり、低賃金でひどい状況に仕事を辞めたいと思っても辞めさせてもらえない状況にある。男性の店でも退職の引き留め、引き戻しがあったという」という。人手不足の状況にありながら、利益を確保するために人件費を削るという矛盾した状況が生じている。いきおい、どう喝や相互監視で職場に縛り付けるという状況が広がっていると指摘する声もある。
男性は「不払い残業や長時間労働、暴力につらい思いをしながら働く仲間が飲食業界には大勢いると思う。そんな仲間のために何か発信できないかと思い提訴した」と話している。同社は提訴について「事情が分かる者が今おらず、コメントすることはできない」と話している。
(東海林智・ジャーナリスト、2021年12月10日号)
【追記:2024年3月25日】
元店長の男性が株式会社大勝軒TOKYOを訴えた裁判は、約2年を経て2023年10月に和解が成立した。原告を支援してきた首都圏青年ユニオンはHPで、「株式会社大勝軒TOKYOと約2年にわたって裁判を続けてきましたが、この度、10月19日に関連訴訟を含め和解により一体的に解決し、本件は終了いたしました。原告組合員は会社から一定の金銭の支払いが約束されたことを受け、和解に応じることとしました。組合としても、本件の勝利的和解で解決できたものと考えています」と表明した。大勝軒TOKYO側は「元従業員との紛争は全面的な解決に至った」としている。