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名護市長選、岸本洋平氏の政策を探る 
辺野古新基地に反対し給食と保育の無料化継続

渡瀬夏彦|2022年1月14日10:19PM

【誇りある豊かさを】

 遡ることおよそ半世紀。1973年、いわゆる「復帰」の1年後、「名護市総合計画・基本構想」が編纂されている。それを作るために尽力した市の企画室職員が、若き日の岸本建男氏だった。当時の渡具知裕徳市長による前文「はじめに」の一節を紹介したい。

《目先のはでな開発を優先するのではなく、市民独自の創意と努力によって、将来にわたって誇りうる、快適なまちづくりを成しとげなければならない。多くの都市が道を急ぐあまり、他ならずも生活環境を破壊していった例に接するにつけ、たとえ遠まわりでも風格が内部からにじみでてくるようなまちにしたいと思うのである》

 当時の渡具知裕徳市長が現在生きていて、辺野古・大浦湾の貴重な自然環境を破壊し、新基地を建設することの見返りの僅かな防衛省予算を恵んでもらおうとする現職・渡具知武豊市長の姿勢を知ったら、まさに怒髪天を衝くどころの騒ぎではないだろう。

 50年前の名護市にはこれほどまでに誇り高き市長や誇り高き職員がいた。稲嶺進前市長も、そして岸本洋平氏も、間違いなくそのDNAを持つ政治家だ。

「本当は、すでに止まっていて当然のはずなのです。県民投票や知事選などで、辺野古反対の民意が出ています。自民党候補が辺野古の賛否を争点にして戦ったときには、反対の民意を代表する稲嶺進さんが圧勝しています。軟弱地盤の改良工事の困難さも明らかになっています。昨年11月には防衛省の設計変更を、玉城デニー知事が合理的科学的な根拠に基づいて不承認としました。心から賛同しますし、市長になったら、デニー知事と連携してストップさせるまで頑張り抜きますよ」

 玉城デニー知事に対する尊敬は、辺野古に関するブレない姿勢にとどまらない、と岸本氏は言う。

「『誰ひとり取り残さない社会をつくる』とデニーさんがおっしゃるとき、まさに多様性を尊重する心、そして人としての優しさがしっかり伝わってきます。わたしが尊敬できる大切なポイントですし、そういうデニーさんとこれから協力して、名護を、沖縄をよくしていきたいですね」

 新基地に反対して、米軍再編交付金をもらえなくなったら、給食費も保育料も無料にはできないだろう、という意地悪な声に対しても、岸本氏の応答は明確だ。

「相手陣営は、無料化のための財源をどうするんだとよく言いますが、名護市の財源規模であれば継続できます。たとえば、子ども医療費の無料化は、県内11市のどこよりも早く、稲嶺市長の時代に米軍再編交付金をもらわず実現させたことなのです。歳出をしっかり見直し、多すぎる予備費を省いたり、歳入ではふるさと納税の大幅アップも、わたしが市長になったら必ず実現させます。つまり、新基地と引き換えの予算などもらわずに、稲嶺市長時代に土台のできた健全な財源で、“無料化政策”は続行できます」

 すなわち、岸本洋平氏にとって、間違いだらけの辺野古新基地建設を止めるのは当たり前のこと。そのうえで、暮らしやすい豊かなまちづくりはできるのだから、「市民の皆さん、どうぞ安心してわたしを市長にしてください」という話なのだ。新市長となった岸本洋平氏が着手する市民本位のまちづくりに、筆者も名護市民として今から大いに期待している。

(渡瀬夏彦・ノンフィクションライター。2022年1月14日号)

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