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「CLP」問題から考えるメディアと政治の距離感
望月衣塑子
望月衣塑子|2022年1月14日10:46PM
メディアの存在価値は、権力監視にある。ところが最近、どうもメディアと政治との距離感がおかしい。この年末年始に驚く出来事が2件、相次いだ。
一つはネット報道番組「Choose Life Project」(CLP)の問題だ。
2020年春からの約半年間、立憲民主党から約1500万円の資金を得ていたのに隠していた。その一方で「公共メディア」をうたって番組を制作。クラウドファンディングで会費制のサポーターを集めていた。寝耳に水だった。
私や『朝日新聞』の南彰記者ら数人が、CLPや立憲関係者から話を聞くなかで問題の一端が判明。番組で司会も務めていた小島慶子氏や津田大介氏、安田菜津紀氏も加わり、CLPの佐治洋共同代表に問いただしたところ事実を認めた。私たちは経緯と事実関係の公表、出演者・視聴者・サポーターへの謝罪、第三者による検証などを求め、1月5日に連名で抗議文を公表した。
佐治氏は翌6日、立憲から資金の支援を受けた経緯をサイト上で公表。「多くの関係者に多大なご迷惑をかけてしまう結果となり」「メディアの役割からも、寄付の透明性という観点からも不適切でした」と釈明した。また、佐治氏も立憲の福山哲郎前幹事長も同日、番組への党の介入や関与は「なかった」とそれぞれ説明した。
サイトの文章にある「フェイクニュースや不公正な差別が横行する状況に対抗するための新しいメディアを作りたい」という当初の志は、本当だったと思う。だが、「特定政党から資金を受けた事実を隠しても問題ない」と判断したことは、報道機関として致命的な誤りだった。
沖縄の辺野古新基地問題やジェンダー平等、森友問題と文書改竄、難民問題など、扱う内容は多岐にわたり、活発な議論もあった。硬派な番組だったと思う。一方、今回私たちが抗議文で求めた「第三者による検証」について、CLPの説明は「第三者委員会の設置の有無なども検討して参りたい」と述べるにとどまった。立憲や間に入った制作会社をかばって腰が引けているのではないか――と思えてしまう。ことほどさように信頼回復は容易ではない。
もう一つ驚いた出来事は、昨年12月27日、読売新聞大阪本社と大阪府の間で交わされた包括連携協定だ。
「情報発信」「教育・人材育成」「安全・安心」「産業振興・雇用」など8分野で連携し、活字文化の推進や災害対応での協力を進めるという。これまでも、地方紙が地方の都市と「包括協定」を結ぶ事例はあった。『東京新聞』も販売店からの提案を受け、川崎市と協定を交わしている。情報誌やセミナーを通じた地域経済の活性化や独居高齢者の見守りなどの生活支援など、コラボで生まれるメリットもあるだろう。だが、府と全国紙という大規模かつ広範囲な組織同士の協定で、トップ同士が会見まで開くことは異例だ。
協定について、早速「ジャーナリスト有志の会」がオンライン上で強力に懸念を示す署名活動を開始し、私も賛同人に加わった。フリーランスの畠山理仁氏は「報道機関の大切な仕事である『権力の監視』をできるとは思えない」と批判した。当然の懸念だ。李下に冠を正さず。いま改めてメディアと権力の距離の在り方が問われている。
(望月衣塑子・『東京新聞』記者、2022年1月14日号)
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