読売新聞大阪本社が大阪府と包括協定 報道機関として問題は
立岩陽一郎|2022年1月17日8:03PM
【元旦紙面で早速万博PR?】
協定には『読売新聞』は報道機関としての大阪府への取材、報道に付随する活動に一切の制限が生じないこと、また大阪府による読売新聞への優先的な取り扱いがないことを確認するとなっている。柴田社長はそれに触れたうえで「これまで通り、事実に基づいた公正な報道と、責任有る論評を通じて、行政を監視していく」と発言。
吉村知事は「取材報道というのは表現の自由、憲法21条に関するもの。国民、府民の知る権利があって、取材の権利、自由がある。そして行政というのは当然、監視される立場にあり、それが変わることは微塵もないというのが認識」と、憲法を持ち出して懸念はあたらないとした。
しかし「地域活性化」の項目には「2025年日本国万国博覧会の開催に向けた協力」と書かれている。万博の開催はさまざまな問題をはらんでいる。それを検証する役割の報道機関が「協力」となると、取材する記者や取材を指揮するデスクの中に、自制が働く懸念がある。それについて問われた柴田社長は「懸念を持たれるむきはよくわかるが、読売新聞は、そうそうやわな会社ではない」と語ったうえで、「万博に関しても問題点はきちんと指摘し、あるいはここは伸ばしていけば良いという点は提案する。そういう形の是々非々の報道姿勢というのを主体的に貫いていく」とした。吉村知事も、「そんなにやわな考え方を持っていません」と述べた。そして22年の元日、『読売新聞』大阪版紙面には万博を宣伝するかのような記事が躍った。
この包括協定にはジャーナリストの有志らが反対声明を出している。声明では「我が国における戦後の報道の公正さの担保はこれまで、権力との十分な距離にあったはずです。その距離を見誤り、独立性を失えば、報道は多かれ少なかれ、権力側の情報を流すだけの『広報』になってしまいます」と問題点を指摘。特に大阪府については「西日本最大の自治体であるとともに、国政政党『日本維新の会』の副代表がトップを務め、特定政党の影響力も強い自治体」だと指摘して、早急に協定を解消するよう求めている。
(立岩陽一郎・ジャーナリスト、2022年1月14日号)