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名古屋バックフィット訴訟が結審
3月10日に判決

2022年2月10日5:49PM

 2021年12月8日、名古屋地裁で、いわゆるバックフィット訴訟が結審を迎えた。本件は、福島第一原発事故後に導入されたバックフィット制度に基づき、大山生竹テフラの噴出規模が2倍以上になるという知見の変更があったのだから、その噴出に対する原発の安全確認の諸手続きが完了するまで高浜原発3、4号機の使用停止命令を命ずることを求めた訴訟だ。判決は3月10日に言い渡される。

マスクを外して集合写真を撮る原告、弁護団。(提供/バックフィット弁護団)

 この知見の変更は、原子力規制委員会においてなされ、それに基づき関西電力に評価の見直しを提出させて事態を収束させることが密かに画策されていたが、関西電力が評価の見直しは不要という態度をとったので、原子力規制委員会は、新知見を基にして基本設計ないし基本的設計方針を変更し、設置変更許可申請をすることという命令を発出した。

 この噴出規模に関する知見は実は新知見ではなく、福島第一原発事故後の設置変更許可申請時に存在した知見であるので、当該設置変更許可を取り消して一から手続きをやり直すのが筋であるが、知見の変更があったことを前提に原子炉等規制法第43条の3の23第1項の規定に基づきバックフィット命令として発出された。ただし同条項は、使用停止命令等が規定されているだけで、このような内容の命令は同条項のどれにも該当しない不可解な命令だった。

 訴訟提起の段階では、上記申請に対する設置変更許可処分が出されていなかったが、訴訟中に許可処分が出され、その後なんらバックフィット命令が出されることなく、詳細設計や保安規定の検討が何となくなされている状態であった。訴訟進行が遅れると、それらの手続が終了し、訴えの利益なしとされかねないので、主張立証を集中的に行なうことを求め、裁判所もその方向の訴訟進行を行ない、早期結審に至った。

 結審にあたり、争点に関する主張を代理人が順次行なった。

 福島第一原発事故の実態を見れば、義務付けを認めるために必要な「重大な損害」の要件を満たしていることは明らかである。

 バックフィットはバックチェックを否定して導入された制度であり、新基準に適合しない原発の運転は許さない制度である。

 炉規法第43条の3の23第1項は、設置許可基準、技術上の基準、保安のため必要な措置を満たすことを義務付け、この三つの事項に違反していると認めるときは、原発の使用の停止等の保安のために必要な措置を命ずることができる旨規定しているが、高浜3、4号機は、技術上の基準、保安のために必要な措置に関し明らかに違反している。噴出規模が2倍以上になったのであるから、火山灰濃度の知見も変更になり、それは設置許可基準の問題であるにもかかわらずそれに関する変更許可はなされていないから設置許可基準にも違反している。

 そして、段階的規制は順次安全を確認する制度であり、基本設計ないし基本的設計方針の審査のみでは原発を運転することはできず、さらに工事計画認可、保安規定変更認可等の複数の規制を段階的に経なければならないが、その段階的規制が完了していない。

 さらに、段階的規制だけでなく、新たに自然現象の脅威に関する規制が強化されて導入された火山の影響の評価を完了するまで原発の運転は許されない。火山ガイドに規定された降下火砕物の原発に対する直接的影響の確認事項として、降下火砕物堆積荷重に対する機器等の健全性の維持、安全上重要な設備が閉塞等により機能を喪失しないこと等もいまだ確認されていない。

 安全が確認されるまで動かすなという判決を期待している。

(青木秀樹・バックフィット訴訟弁護団長、弁護士 2021年12月24日号)

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