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原発事故から11年 区域外避難者11人が福島県を提訴

鈴木博喜|2022年3月22日7:21PM

 我慢の限界だった。

 東京電力福島第一原発事故で政府の避難指示が出されなかった地域から避難した、いわゆる区域外避難者(自主避難者)11人が、事故から11年となった3月11日、福島県を相手取り1人100万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を起こした。

3月11日、原告らによる東京地裁前での入廷行動。(撮影/鈴木博喜)

 訴状によると(1)福島県知事が応急仮設住宅としての住宅無償提供を2017年3月31日で打ち切った(2)福島県が避難先で災害復興住宅を建設しなかった(3)19年4月1日以降、福島県が原告らを不法占拠者として扱い、親族に退去への協力を求めるなどの嫌がらせをした――ことなどによって精神的苦痛を味わったと主張している。

 11人は福島県から東京都や埼玉県に避難し、「みなし仮設住宅」として提供された国家公務員宿舎に入居した。だが、福島県は17年3月末で住宅無償提供を一方的に打ち切り。経済的理由などから打ち切り後も退去できずにいた避難者に、懲罰的措置として19年4月以降は、家賃の2倍額を損害金として請求し続けている。

 20年3月には国家公務員宿舎「東雲住宅」から退去できずにいる4世帯に対する〝追い出し訴訟〟を福島地裁に起こした。同年12月には、避難者の了解を得ずに戸籍などから親族の住所を調べて訪問し、法的措置をちらつかせながら「退去へのご協力」を求めている。福島県の内堀雅雄知事は口を開けば「避難者一人ひとりに寄り添う」と言うが、現実には国家公務員宿舎からの避難者追い出しを加速させているのだ。

「事故発生から11年も経過しているのに何が『我慢の限界』か」という疑問に対し、弁護団長の井戸謙一氏はこう語る。

「原発事故被災者に対するこの国の施策は大変冷酷であり、非人道的だった。とりわけ、区域外避難者に対する施策は過酷。応急仮設住宅こそ用意されたが、それ以外はほとんど何の支援もなし。その応急仮設住宅も17年3月末で打ち切られてしまった。

 住宅提供を打ち切られてしまった区域外避難者は当然困った。泣く泣く福島に帰還した人もかなりいる。帰還できない人は公営住宅に移るか自力で民間賃貸住宅に移るか、そこに居座るかしか選択肢がない。大半の避難者は公営住宅に応募する資格すらない。東京や埼玉で民間賃貸住宅に移るといっても経済力がなければどうしようもない。〝2倍請求〟がどんどんたまっていくがどうしようもないという状況に追い込まれてきた」

【県が県民を追い出すのか】

 避難指示が出なかったのだから福島に戻れば良いのでは、との疑問にも井戸弁護士はこう答える。

「被曝はどんなに少量であってもリスクを伴う。小さなリスクを無視できる人はいい。しかし、無視できない人はできない。無視できない人に無視しろと言う権利はない。原発事故被災者に対する非人道的な施策の是非を正面から問う裁判になると思う」

 原発事故被災県である福島県が、他県に避難した県民をあの手この手で追い出すという異常事態。あげくには、国家公務員宿舎の所有者でもないのに〝追い出し訴訟〟を起こし、避難者を被告にしている。避難当事者として福島県に対し〝追い出し〟をやめるよう訴え続けている村田弘さんが「内堀知事は本来なら県民を守らなければならないが、残念ながら政府の大方針を先駆けるような形で避難者を追い詰めてきた」と怒るのには、長年にわたる内堀知事の取り組みがあるのだ。

 提訴後の報告集会で、原告の1人は「いつ福島県から裁判所に訴えられるかと不安が募る」とマイクを握った。

「今日で震災から11年。あっという間だった。この間、いろいろな選択を迫られて、自分なりにベストな選択をしてきたが、福島県から早急な退去を求められるばかり。19年からは毎月、2倍家賃が損害金として請求され、心の負担になっている。私個人の力ではどうすることもできない状況に陥っている。みなさんの力をお借りして乗り越えたい」

(鈴木博喜・「民の声新聞」発行人、2022年3月18日号)

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