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SNS投稿めぐる仙台高裁判事の弾劾裁判初公判 
「裁判官としての威信を失うべき非行」

佐藤和雄|2022年3月22日8:19PM

 SNS上の投稿などで殺人事件の被害者遺族を傷つけ、侮辱したなどとして国会の「裁判官訴追委員会」に訴追された岡口基一・仙台高裁判事(56歳)=職務停止中=を辞めさせるか否かを決める弾劾裁判の初公判が3月2日、国会の「裁判官弾劾裁判所」で開かれた。岡口判事は訴追内容を認めるかどうかを聞かれ、「私が致しました表現行為の中には不適当なものもあり、そのことがあってこの裁判に至っていることについては裁判の冒頭で、深く、深くおわび申し上げたい」と述べた。続けて「個々の認否は弁護人の陳述に委ねたい」と発言。弁護団を代表して伊藤真弁護士が、裁判官弾劾法第2条第2号に規定する罷免理由には「全く該当しない」と述べ、全面的に争う考えを示した。

3月2日午後1時前、裁判官弾劾裁判所がある参議院第二別館に入る岡口基一判事(手前)。(撮影/佐藤和雄)

 裁判官の弾劾裁判は、衆院と参院で選ばれた国会議員14人(下の図参照)が「裁判員」となり、「職務上の義務に著しく違反し、または職務を甚だしく怠った」場合や、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった」場合に罷免する手続き。刑事事件と同じような手続きで進められ、裁判員の3分の2以上が罷免に賛成すれば、罷免の判決が下される。判決に対して不服を申し立てる方法はなく、宣告と同時に確定する。罷免されると、裁判官の職だけでなく法曹資格も失う。退職金も出ない。一方、宣告から5年経過すれば、法曹資格を回復するための裁判を弾劾裁判所に起こすことができる。

 2日の初公判では、新藤義孝・訴追委員長(衆院議員)が訴追状を朗読。岡口判事が「裁判官であることが他者から認識できる状態」で、東京高裁がウェブサイトに誤って載せた殺人事件の判決文のアドレスを2017年12月にツイッターに掲載するとともに「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に、無惨にも殺されてしまった17歳の女性」と投稿した問題を指摘。また、19年11月には抗議した遺族について、フェイスブックで「高裁に洗脳」されているなどと書いたことなど、一連の行為が「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当すると結論づけた。

 一方、弁護人の伊藤真弁護士は、訴追状にある「裁判官であることが他者から認識できる状態で」について「実名でのアカウントだが、ツイッターでは職業の表示はなく、フェイスブックでは『裁判所職員』との表示だった」と述べ、否認した。また、訴追対象とされている行為のうち4件は「訴追の時効(3年)」が過ぎていると指摘。その上で、「被害者遺族との関係で不適当な表現が含まれることは事実であり、被訴追者(岡口判事)も直ちに削除し謝罪の意思を示した。しかし、被害者遺族を傷つけ、侮辱しようとする意図に基づくものではなく、客観的にも傷つけた、あるいは侮辱したものではない」と述べ、罷免理由には該当しないと主張した。

(佐藤和雄・編集部、2022年3月11日号)

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