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映画『宮本から君へ』助成金訴訟、製作会社が逆転敗訴
臺宏士|2022年3月23日12:52PM
映画『宮本から君へ』(2019年公開)に文部科学省所管の独立行政法人日本芸術文化振興会(河村潤子理事長、芸文振)が助成金(1000万円)の交付を決めたにもかかわらず、出演者の麻薬取締法違反での有罪確定後に不交付としたのは不当だとして、製作した「スターサンズ」(河村光庸社長)が取り消しを求めた裁判の控訴審判決が3月3日にあった。東京高裁の足立哲裁判長は「観客等に対し『国は薬物犯罪に寛容である』と誤ったメッセージを発したと受け取られる」などとする芸文振の主張を追認し、「スターサンズ」の訴えを認めた一審判決(21年6月)を取り消し、同社の請求を棄却。同社は逆転敗訴した。
一審で東京地裁の清水知恵子裁判長は「違法薬物に対する許容的な態度が一般に広がるおそれがあるとは、にわかには認めがたい」との判断を示していた。同作の出演者で有罪が確定したのはピエール瀧さんで、129分のうち11分間ほど登場する。控訴審判決は「主演ではないものの、本件映画のストーリーにおいて欠くことのできない重要な役割を果たしている」とし、補助金不交付については「薬物乱用の防止という公益の観点からされたものであり、芸術的観点からされたものではない。公益が抽象的な概念であって、不交付の判断の考慮要素たり得ないということはできない」と芸文振の主張を全面的に支持した。
河村社長は判決後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、「裁判官の主観が入った表現への介入がされた。(薬物使用や殺人など今後製作者は)いろいろなシーンで配慮しなければならなくなる。今の裁判制度と裁判官の資質を疑う。何の説得力もないきわめていい加減な判決だ」と批判した。同社は上告する方針だ。
芸術・文化分野への公的助成をめぐる画期的な一審判決が覆された。最高裁の良識が問われる。
(臺宏士・ライター、2022年3月11日号)
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