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新たな選択肢「経口中絶薬」
日本女性に産む産まない、中絶方法の自己決定権を
神原里佳|2022年3月31日8:27PM
外科的な手術をせず飲み薬で人工妊娠中絶ができる「経口中絶薬」は、約80の国や地域で使用され、世界保健機関(WHO)も安全だとして推奨している。人工流産を起こさせる薬で、価格は世界平均で1000円以下。これまで日本では認可されていなかったが、2021年12月、英国の製薬会社ラインファーマが日本で初めて承認を求め、厚生労働省に申請した。
ところがこの動きに関して、日本産婦人科医会がNHKの取材に対し「処方は当面、入院が可能な医療機関で、中絶を行う資格のある医師だけが行うべき」とコメント。「医師は薬を処方するだけでなく、排出されなかった場合の外科的手術など、その後の管理も行うので相応の管理料が必要」として、薬の処方にかかる費用は人工中絶手術と同等の10万円程度が望ましいという見解を示した。これでは女性の負担は現在とほぼ変わらず、薬を導入する意味がない。
産む産まないを女性自らが選べることを目指し、刑法・堕胎罪の撤廃を求めるグループ「SOSHIREN 女のからだから」は1月22日、経口中絶薬に関する緊急オンラインイベントを実施。カナダを拠点に世界中の女性が安全に中絶できるようサポートする団体「Women on Web(WoW)」のカタリーナさん(仮名)が、日本の中絶の問題点や経口中絶薬について解説した。
現在、日本で認められている中絶手術には、鉗子などの器具で子宮内の胎児や胎盤をかき出す「掻爬法」と、管で子宮内容物を吸い出す「吸引法」がある。掻爬法は子宮を傷つけるリスクがあるため、WHOは「時代遅れの方法で推奨できない」としているが、多くの産婦人科で行なわれている。 また、手術には10万~20万円かかり、パートナーの同意が必要。中絶したいと言うと医師から叱責されたという女性も少なくない。
そもそも日本には堕胎罪があり、中絶が原則的に禁止されている。そのため手術も母体保護法指定医でなければ行なえない。こうしたハードルの高さから、孤立出産したり、うまく育てられずに虐待につながったりもしている。
【背景に女性への偏見】
カタリーナさんは「日本社会には中絶をする・しないや、方法について自分で選ぶ権利がない。女性の判断力が信じられていないと感じます。 WoW には『日本の危険な中絶手術を受けたくない』『手術費が高すぎて工面できない』『誰にも打ち明けられない』と日本からも多くの相談が寄せられます。予期せぬ妊娠は誰にも起こりうることなのだから、誰もが合法的で安全な中絶ができる社会でなければならない」と語る。