関電原発不正マネー還流事件
証拠原本の有無に言及しない原告関電に広がる推測
脱原発弁護団全国連絡会|2022年5月6日2:56PM
関西電力の役員等が原発工事等の不正発注で生み出された金品総額約3億7000万円を受け取っていた「関電原発不正マネー還流事件」では、さらに追加納税分と役員報酬の闇補填(ほてん)も明らかになった。
株主からの請求で関電は、旧役員5人(八木誠前会長、岩根茂樹前社長、豊松秀己元副社長、森詳介元会長、白井良平元取締役)に約19億円余の損害賠償請求、闇補填問題で八嶋康博元監査役を追加提訴(会社訴訟)。
一方、株主側は、損害額はもっと大きいとして新旧役員22人を別途提訴(株主代表訴訟)し、そのうち、会社訴訟の被告については会社訴訟で併せて審理されている。
この、原告席に関電と脱原発株主が並ぶ異例の裁判(会社訴訟)の第2回口頭弁論期日が4月18日14時、大阪地裁にて開かれた。
法廷では、株主総会に出席するなど、関電の経営を監視してきた原告株主の佐藤三惠さんが意見陳述を行なった。
関電の二度にわたる電気料金値上げの際の電気料金審査専門小委員会での審査を傍聴し、関電は値上げする際の役員報酬の減額を守らず、自分たちの報酬減額に抵抗を続ける姿勢が厳しく追及されていたことを指摘し、その上裏で補填までしていたことは公益企業として、市民の信頼を裏切る行為でとうてい許されるものではないと述べた。
原告株主代理人の大河陽子弁護士は、金品受領問題について、被告八木氏らは、森山榮治氏から金品等の交付を受けたが、返却することを期し預かり保管していたというが、その具体的な態様を明らかにするように求めた。また、預かっていただけというが、金沢国税局の税務調査がなければ、返却することはなかったし、そもそも受領した金品について修正申告と追加納税しているのだから、自らの所得としていると反論した。また、50万円のスーツ仕立券は社会的儀礼の範囲ではないと断じた。
法廷では珍しく原告関電と被告側との口頭でのやり取りがあった。被告八嶋氏より、原告会社が提出した、八嶋氏の押印のある証拠の原本提出を求めた際、会社は原本に代えて写しを提出する、原本の有無について言及しないと述べ、被告側の「原本はないということか」との問いに原告会社は、そこまでは言っていないとの応酬があった。
この点について、期日後に、あの書証は報酬補填をする重要な決裁書類なのに関電は写しを出すが原本があるかどうか言及しないなど、普通はあり得ない、何か、後ろ暗いことがあるのではないかと河合弘之弁護士が指摘した。また、会社側の対応は尋常ではなく、醜態をさらしていると海渡雄一弁護士が述べた。
記者会見を兼ねた報告集会では、別件の株主代表訴訟の文書送付嘱託についても説明があった。関電の設置した社内調査委員会や取締役責任調査委員会等の報告書の基となる資料が極めて重要であり、原告株主らは、報告書の認定の基になった文書、電子メール、議事録、ヒアリングメモ等について文書送付嘱託の申立を行なった。これを裁判所は認め、本年1月14日付で資料の所持者である関電等に対して提出するように求めた(本誌2月25日号参照)。
しかし、関電はどの資料を根拠に報告書記載の事実を認定したのかわからないという、こじつけも甚だしい理由で全面拒否したのである。
原告株主は、このような拒否を阻むため、関電が各委員会に提出した書類を証拠すべて提出しろと再度送付嘱託を4月15日付けで求めた。証拠を出させることに成功するかが極めて大事であると海渡雄一弁護士は述べた。
会社訴訟の次回期日は非公開での審理であり、口頭弁論の予定は決まっていない。