福島県いわき市で中間貯蔵施設問題描くパネル展開催
稲垣美穂子|2022年5月13日7:35PM
福島県いわき市湯本の温泉旅館「古滝屋」内に昨年3月開館した「原子力災害考証館furusato」で、中間貯蔵施設の課題と問題点を考えるパネル展「私たちが失ったもの 取り戻したいもの それは“ほんとうの笑顔”」が今春より開催中だ(終了日未定)。
2012年3月、国は東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染で生じた汚染土などの放射性廃棄物を保管する中間貯蔵施設を県内の楢葉・大熊・双葉の3町に建設する方針を発表。同年7月には廃棄物を貯蔵開始後30年以内に県外処分する方針を閣議決定した。大熊町は14年12月、双葉町は翌月に施設建設受け入れを表明。15年3月には搬出先など未確定のまま廃棄物搬入作業が開始された。
一方、施設建設地の地権者有志による30年中間貯蔵施設地権者会の門馬好春会長は、環境省による用地獲得の進め方は「不公正、不公平だ」という。地権者会によれば公共事業については「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(1962年閣議決定)などの“国内統一ルール”があり、買取価格や地代などが不当に安くならないように定められている。だが同省は当初からそれを無視。建設地国有化を前提に既存の法律にない独自の「地上権」に基づく価格を設定し、強引な交渉で地権者に苦渋の選択を迫ってきた。加えて国が当初示した契約書は「30年で返還しなくてもよい」とも取れる内容だったが、地権者会が交渉を続けた結果「地上権」存続期間を最長30年間とする旨が明示された。
本展示ではこうした地権者の声や取り組みなどを紹介している。門馬会長は「正当な補償の侵害とは基本的人権(生存権)の侵害。私たちが声を上げなければ、将来の公共事業でも今回のことが前例とされかねず、他の地域の地権者を救う意味もある。中間貯蔵施設をめぐり多くの問題や課題があることを知ってほしい」と話す。
(稲垣美穂子・フリーライター、2022年4月29日・5月6日合併号)