大阪カジノ問題、市民団体が住民投票求める署名21万筆を提出
平野次郎|2022年6月23日7:47PM
大阪府・市が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致をめぐり、市民団体の「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」が6月6日までに、住民投票条例制定を求める署名約21万筆を集め、府内72市区町村の選挙管理委員会に提出した。
同会の共同代表など4人が6日に大阪市内で会見し、前日までに集計した「20万8552筆」の署名数を発表。条例制定に必要な法定数の約14万6000(府内有権者数の50分の1)を上回る20万の目標数を達成できたという。今後、各選管が署名が有効かどうかを審査し縦覧手続きを経て署名数が確定。法定数を超えれば市民団体が知事に条例制定を直接請求できる。請求を受けた知事は府議会を招集し賛否の意見を添えて住民投票条例案を提出しなければならない。府議会が条例案を審議する。
だが府議会はカジノ誘致に賛成する大阪維新の会が過半数を占め、同会代表の吉村洋文知事は6日「今の時点で誘致するかどうかの住民投票をする必要はない」と記者団に語った。このまま状況が変わらなければ、条例案は大阪府議会で否決される公算が大きい。
では、先に市民団体がカジノの是非を問う住民投票を求める署名運動を実施した横浜市と和歌山市の場合はどうだったのか。いずれも法定数を超える署名を集めたものの条例案はそれぞれの市議会で否決された。だが署名運動を通じて盛り上がった世論の力でカジノ誘致にストップをかけている。
横浜市の場合、2020年9月に市民団体が署名運動を開始し、法定数の3倍以上の20万筆を超える署名を集めたが、条例案は21年1月の市議会で過半数を占める自民、公明両党の反対で否決された。しかし8月の市長選挙ではカジノ誘致の是非が争点となり、誘致反対の勢力を結集した新顔で元大学教授の山中竹春氏(立憲民主党推薦)が、自民党が割れた現職市長と元国家公安委員長の2人に大差をつけて当選。翌月、山中市長が正式にカジノ誘致撤回を表明した。
【自民議員からも反対の声が】
和歌山市では21年11月に「カジノ誘致の是非を問う和歌山市民の会」が署名運動を始め、法定数の3倍以上となる約2万筆を集めたが、今年1月の市議会で条例案は自民、公明両党などの反対多数で否決された。続いて和歌山県は2月にIR区域整備計画案を発表し、県内で説明会や公聴会を開催した(本誌22年3月4日号既報)。だが4月に開いた県議会では整備計画案に事業主体の資本構成や資金調達などが示されていないことなどから紛糾。カジノ推進派の自民党からも「資金計画がずさんだ」などの理由で反対する議員が相次ぎ、整備計画の国への認定申請が否決された。
署名運動を実現した「和歌山市民の会」共同代表の豊田泰史弁護士は「運動を始めたことでマスコミが取り上げ、議会でも質問する議員が増えるなどカジノへの関心が高まり、これまでの運動とはちょっと違うなと感じた。一定の数を獲得すれば議員の見る目が違ってくるし、行政の対応も変わってくる」と評価する。
こうしてカジノ誘致を名乗り出ていた自治体のうち横浜市と和歌山県が撤退し、4月末に国へ整備計画の認定申請をした大阪府・市と長崎県の2自治体について、国土交通省の審査委員会が審査する。
大阪の「住民投票をもとめる会」は6日の記者会見で、運動が第2ステージに入ったと声明。「メディアのアンケートでは過半数がカジノ反対なのに府議会ではカジノ賛成の大阪維新の会が過半数を占めるというねじれが生じている。これを正すために、直接民主主義の手段である住民投票で決めるべきだと訴えていく」と述べた。
共同代表で作家の大垣さなゑさんはこう付け加えた。「政党や労働組合など既存の組織を当てにせず、個人から個人へという原則を貫いた。個人がゲリラ的に動いたことから、既存の組織・団体に所属する人たちを巻き込んでいくことができた。新しい市民運動への可能性を見ることができた」
(平野次郎・フリーライター、2022年6月17日号)