長崎市性暴力裁判、原告勝訴判決
田上市長「心より謝罪を」
岩本太郎|2022年6月24日7:14PM
2007年に長崎市で女性記者が同市原爆被爆対策部長(当時)へ取材中、性暴力を受けたとして市を提訴した裁判(5月27日号、6月10日号既報)で6月7日、市は長崎地裁による5月30日の原告勝訴判決に控訴しないと発表した。
6日午後、市議会で控訴(同13日期限)するか否かを問われた市は明言を避けた。7日の夕刻より市役所で開かれた臨時記者会見で、田上富久市長は「判決を真摯に受け止め、被害者である原告に心より謝罪をさせていただきたい」と表明。市役所内部での再発防止への取り組みのほか、自身の給与の一定期間減額、記者への直接謝罪の意向も公表した。ただ、裁判の最終準備書面段階で過失相殺(原告側の責任を指摘して賠償金の減額を求めた)を主張して原告側や市民、メディアから批判を受けた点については「当事者の部長が死亡(自死)して事実関係が確定できない中では、裁判所の判断を仰ぐため、訴訟活動上必要だった」とも語った。
これを受け、同日18時から原告側が開いた記者会見で原告記者と原告代理人の中野麻美弁護士は、市が性暴力、およびその後に原告が受けた二次被害(市幹部による虚偽情報の流布)の責任を認めて市長自ら謝罪に踏み切ったことを受け入れる意向を明らかにした。ただ前記の過失相殺に関する市長発言への懸念も表明。裁判の過程で市側から受けたそうした主張の撤回を今後のやりとりの中で求めていくかについては今後検討するとした。
原告の女性記者は、暴力事件に遭った他の被害者らからも今回の勝因を聞きたいとの声を多数もらったとし、この経験を「何らかの形で社会に提示していければ」と発言。原告の支援にあたった新聞労連の吉永磨美中央執行委員長も「報道に携わる者としてこの事件をどう捉えるかについて発信をしていきたい」と述べた。
(岩本太郎・編集部、2022年6月17日号)