原発事故刑事裁判の控訴審が結審、12月にも判決
「最高裁判決が追い風に」
佐藤和雄|2022年7月1日7:58PM
東京電力福島第一原発事故をめぐり、旧経営陣3人が強制起訴された刑事裁判の控訴審が6月6日、結審した。被害者参加代理人の弁護士らが5月11日に裁判の続行を求める上申書を東京高裁に提出し(本誌5月20日号既報)、裁判が続くのかどうかが注目されていたが、認められなかった。ただ、公判後に細田啓介裁判長は、判決日の候補として12月14日、来年1月16日、18日を提示。判決文の作成に6カ月をあてることから、被害者側は6月17日の民事訴訟の最高裁判決を踏まえて、判断するのではないかとみている。
東京電力の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人は、福島県の入院患者など44人を原発事故からの避難の過程で死亡させたなどとして、検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制起訴された。
東京地裁、東京高裁での裁判での最大の争点は、10メートル超の津波を予見する根拠として、政府の地震調査研究推進本部が2002年7月末に公表した地震活動の「長期評価」が信頼できるものだったかどうか。一審判決では「『長期評価』の見解が客観的に信頼性、具体性のあったものと認めるには合理的な疑いが残ると言わざるをえない」として無罪を言い渡した。
一方、民事の損害賠償請求訴訟ですでに判決を下した4高裁のうち三つが国の責任を認め、その際に「長期評価」について「相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かし難く」(20年9月の仙台高裁判決)と認定している。このため、被害者参加代理人の弁護士らは6月17日の最高裁判決でも「長期評価」の信頼性が認められるのではないかと期待している。
結審後の報告集会で被害者参加代理人の甫守一樹弁護士は「裁判官は最高裁判決を『憲法』のように思っているので、大きな追い風になるのは間違いない」と語った。
(佐藤和雄・編集部、2022年6月17日号)