若者から収奪する「日本学生支援機構」 “秘密指令書” とは
三宅勝久・ジャーナリスト|2022年7月30日7:00AM
連載”日の丸ヤミ金”奨学金 第10回
< ついに国会でも問題視された繰り上げ一括請求。これを受けてか支援機構の公式サイトに微妙な変化が。だが一方、裁判ではその問題性がなお続々と表面化しつつある。>
「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠った」時にのみ認められている繰り上げ一括請求(注1)を、返済に困窮している者に対して容赦なく行なう。独立行政法人日本学生支援機構(以下、支援機構)法施行令5条5項に明白に反する違法回収を、支援機構は遅くとも2013年以降続けている。筆者は繰り返し問題を指摘してきたが一切耳を傾けることはなかった。施行令5条5項の存在や最小限の内容を公式サイトで説明することすら怠ってきた。
この公式サイトが、およそ10年の月日を経てようやく「改善」される運びとなった。3月2日の衆議院文部科学委員会で宮本岳志議員(共産)が追及した成果である(本誌3月25日号参照)。
件の公式サイトには、「督促」と題して従来こんな記載があった(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/tokusoku/index.html)。
〈(人的保証の場合)長期間延滞が続くと、次のような民事訴訟法に基づく法的措置を執ります。⑴支払督促予告……〉
〈(機関保証の場合)延滞が続いた場合、次のような督促を行うことになります。⑴一括返還請求……〉
これらの記載の後に次の一文が付け加えられることになった。
〈督促を受けても返還期限猶予等の手続きや連絡がない等により、延滞を続けている者については、独立行政法人日本学生支援機構法施行令第5条第5項に定める「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠った」と判断すること等により、一括請求します〉
一切説明がなかったころよりはましだろう。大きな前進である。だが、これでは「延滞者=支払能力あり=一括請求可能」という意味にしか読めない。支払能力を調べたうえで一括請求の可否を判断する。それが本来あるべき法令遵守の姿ではなかろうか。支援機構の法令軽視体質がよく現れた一件である。
さて、「支払能力」無視の違法な繰り上げ一括請求の被害が本人のみならず保証人にも及んでいるのではないか。そんな疑いが、ある裁判の場で浮上した。
(注1)分割で返還する奨学金ローンを、返還期日を待たずして前倒しして全額一括弁済を求める回収方法。日本学生支援機構は「支払能力」を調査せず、生活困窮者に対しても一括請求を乱発している(本誌2021年4月2日号など参照)。