若者から収奪する「日本学生支援機構」 “秘密指令書” とは
三宅勝久・ジャーナリスト|2022年7月30日7:00AM
保証人にも「一括請求」か?
このAさんが受け取った支援機構の請求書をよく見ると、右に述べた「分別の利益」を無視した違法回収の問題とは別に、違法な繰り上げ一括請求を疑う余地があることに気がつく。
「請求書」は3通(いずれも概数)。
① 89万円(元金61万円、延滞金28万円)
② 273万円(元金244万円、延滞金28万円)
③ 560万円(元金480万円、利息23万円、延滞金58万円)
この3件の請求のうち、分割弁済の返還期日がすべて過ぎているのは①だけだ。②と③は分割返済の期日がまだ残っている。その証拠に、それぞれ「内訳」としてこんな記載がある。
1 期日到来分
2 期日未到来分
期日未到来分の元本は、②が133万円、③が269万円、合わせてざっと400万円だ。
返還期日が来ていない「期日未到来分」を前倒しして請求する法的根拠について、請求書には何も書かれていない。施行令5条5項の「繰り上げ一括請求」だとみるのが自然だろう。そうすると、主債務者(Aさんの姪)に支払能力があることが前提となる。姪に支払能力があるとは考えにくい。つまり、支払能力を無視した違法な繰り上げ一括請求が行なわれた疑いがある。
もっとも、姪や連帯保証人が破産するなどしていれば状況は違ってくるかもしれない。しかし、Aさんへの請求にあたって支援機構は、主債務者や連帯保証人の経済状況を書面で説明していない。払わない者に対しては全額請求するのは当然だ、保証人なら全額払うのが当然だ、と言わんばかりの乱暴なやり方なのだ。
黒塗り取り消し求め提訴
支援機構による違法回収の内幕を知る手がかりがある。「法的処理実施計画」と題する文書だ。その内容は黒塗りによって秘密にされている。文書を開示すれば、奨学金ローンの利用者の中に、自身の所在や財産を隠す者が出てきて回収が困難になり、奨学金事業に支障が出るというのだ。
不自然な説明ではなかろうか。実はこの説明は口実にすぎず、知られると都合の悪い事実が書かれているのではないかと勘ぐりたくなる。
そこで筆者は6月7日、日本学生支援機構を相手どり、黒塗りの取り消しを求めて行政訴訟を東京地裁に起こした。8月26日10時40分から同地裁703号法廷で第1回口頭弁論が開かれる。(つづく)
(三宅勝久・ジャーナリスト、2022年7月1日号)