「運転開始の見通しがないから具体的危険はありません」
電源開発の驚きの主張
大間原発建設差し止め訴訟・控訴審
脱原発弁護団全国連絡会|2022年8月5日5:57AM
脱原発弁護団全国連絡会からの7月の報告 その2
大間原発の建設差止等請求訴訟の控訴審第8回口頭弁論期日が7月12日、札幌高裁(大竹優子裁判長)で開かれた。
前回の期日で裁判長が交替し、弁論の更新手続きに伴う意見陳述として、両当事者が主な主張についてプレゼンをおこなった。
控訴人住民側は、中野宏典弁護士が冒頭で、日本壊滅の恐れがあった福島第一原発事故の甚大な被害を、もう一度思い出してほしいと訴えた。
そして、元・原子力規制委員会の委員長代理の島崎邦彦氏や国会の事故調査委員会の委員長・黒川清氏の発言を引き、①この事故を経ても日本の原子力規制行政は変わっていない、②原因の一つには、司法が毅然とした判断をしないことがあるのではないか、司法は責任を果たしていると福島の人たちの前で胸を張って言えるのか、裁判所には、ぜひしっかりと考えていただきたいと迫った。
原審函館地裁は、基準適合判断(評価)の合理性についても判断対象となることを明らかにしており、住民側も電源開発も基準適合判断の合理性についての主張・立証に多くの時間と労力を割いてきた。しかし、地裁判決は、大間原発の稼働のめどが立たず、具体的危険がないため基準適合判断はしないとし、自らが整理した争点の大部分について、判断を回避してしまった。
泊原発差止判決(5月31日)は、8年半も要してなお、事業者が主張立証を終えることができないことは、泊原発が抱える安全面や、審査における問題の多さや大きさをうかがわせる、としており、これは本件でも全く同様だ。同判決は、行政判断の前の段階で、基準の合理性だけでなく、基準適合判断の合理性についても判断して住民側の請求を認容した。
中野弁護士は、本件でも泊原発判決のような認容判決が出されるはずであったこと、本日の説明に該当する書面を読んでいただければおのずと控訴審での審理の道筋が見えてくると結んだ。
他方、被控訴人国は本件原発は建設中で、いまだ核燃料も搬入されておらず、設置変更許可の目途もついておらず、控訴人らの生活利益等は法的保護に値しないとして、早期判決を求めた。同じく被控訴人電源開発は、本件原発が運転開始の見通しもつかず具体的危険はない等の説明を行ない、他にも「準国産エネルギー」が必要、多重障壁で放射性物質を閉じ込める等、3・11をふまえない空疎な内容であった。
次回期日は来年3月7日午後2時からを予定している。
(2022年7月29日号)