東電刑事裁判控訴審 続行期日申し入れ
東電株主代表訴訟判決の証拠調べ求める
写真・文 脱原発弁護団全国連絡会|2022年8月26日2:52PM
〈脱原発全国弁護団全国連絡会の報告〉
7月28日、福島原発刑事訴訟支援団は被害者参加代理人弁護士らとともに、弁論を再開して続行期日を指定するよう東京高裁に署名4074筆を添えて申し入れた(5月20日提出分と合わせ計1万6218筆。引き続き署名集め中)。
理由は、東京地裁民事8部(朝倉佳秀裁判長)が7月13日、東電株主代表(株代)訴訟で原告らの請求を認め、被告の勝俣恒久元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長に、連帯して13兆3210億円の損害賠償の支払いを命ずる判決を下したため(本誌7月29日号参照)。株代訴訟の判決を証拠調べするよう求めている。
福島原発事故の東電旧経営陣の刑事責任を追求する東電刑事裁判の控訴審は、6月6日に結審したが、担当している東京高裁刑事10部の細田啓介裁判長は、今後の最高裁判決などの内容によっては弁論再開の可能性を示していた。
被害者参加代理人の海渡雄一弁護士は「株代判決は東京地裁判決と全く異なる判断をした。この判断によって判決の見直しが必至になっていると思う。政府の地震調査研究推進本部(推本)の長期評価に基づいて仮に土木学会に正確な津波の高さを検討依頼していた期間があったとしても、その間にも水密化などの措置を講ずるべきだったとして、過失を認めた。勝俣らに対しては、『御前会議』の中での14メートル程度の高い津波がくるとの発言や、それに従って東海第二原発等の対策をとっていた会社のことを聞いていたし、津波対策を講ずることができたと責任を肯定している。弁論を再開して、判決を証拠として取り調べて地裁(の無罪)判決を見直していただきたい」と述べている。
株代判決は、原発には過酷事故の危険性があり、それが国そのものの崩壊にもつながりかねない、ゆえに万が一にも事故を起こさないようにしなければならないことを正面から認めた。
武藤と武黒、小森は原子力担当役員として、2008年~2010年には、推本の長期評価に基づく津波対策が避けられないものであることについて、説明を受けており、津波対策を講じなかったことは任務懈怠(けたい)に該当すると認定。勝俣と清水は、2009年2月の御前会議における吉田昌郎原子力設備管理部長(当時)の発言に基づいて、対策を命ずることが可能であったとして、責任を認めた。
なお、株代判決のポイントと福島原発刑事裁判への影響を2分で解説した動画「東電株主代表訴訟判決の影響」(https://youtu.be/U3sR8GeXoqY)が公開されている。(一部敬称略)
(2022年8月26日号)