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これも裁判対策なのか
ウィシュマさん死亡事件
妹の日本滞在を認めない法務省

西中誠一郎・ジャーナリスト|2022年9月11日7:00AM

8月3日、記者会見に臨んだポールニマさん(右)とワヨミさん。(撮影/西中誠一郎)

「在留資格の変更申請が不許可になると思わなかったので衝撃を受けています。姉の死亡事件の真相究明のために裁判が始まったばかりで、今帰国することはできません。でも、あきらめません」

 昨年3月、法務省出入国在留管理庁(以下、入管庁)の名古屋出入国在留管理局(以下、名古屋入管)で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の妹の一人、ポールニマ・ラトナヤケさん(28歳)は8月3日の緊急記者会見で、涙をこらえながら訴えた。

 ポールニマさんは昨年5月に姉の葬儀に合わせて来日して以来、90日間の「短期滞在」の在留資格の更新を続けながら、事件の真相究明と再発防止を求めて法務大臣や入管庁長官との面談のほか、昨年11月には名古屋入管幹部等への刑事告訴を行なった。今年3月には国家賠償請求訴訟を提起し、6月と7月に名古屋地裁で行なわれた2回の口頭弁論では姉のワヨミ・ニサンサラ・ラトナヤケさん(29歳)とともに意見陳述。入管庁が保持する、ウィシュマさんの死までの様子を撮影した監視ビデオ映像(約295時間)の全面開示や、入管収容制度の抜本的な改善などを強く訴えてきた(本誌6月24日号などで既報)。

 しかし在留資格の更新手続きの窓口だった東京入管が今年5月、「短期滞在」での更新は「今回限り」と決定。ポールニマさんは6月20日、裁判への参加などを理由に「特定活動」への在留資格変更許可申請を行なったが、8月3日午前中に東京入管に呼び出され、申請却下の「通知書」を渡された。

ポールニマさんが渡された申請却下の「通知書」。(撮影/西中誠一郎)

 代理人で東京入管への出頭や記者会見に同席した駒井知会弁護士は「国賠訴訟は始まったばかりだし、ご遺族の妹さんたちが裁判に参加することは非常に重要です。訴えられている法務省入管側が、ワヨミさんやポールニマさんが裁判に出廷できるかどうかを自由裁量で決めてしまうのはあまりにも不公平です」と批判。そのうえで「検察審査会への申し立ての件(後述)もありますし、法務大臣の裁量で決められる『告示外』の『特定活動』は不許可でしたが、短期滞在の更新回数が決まっているわけではない」と語った。ポールニマさんの現在の在留期限が切れる前の8月中旬に、在留資格の更新許可を東京入管に再度求める予定だ。

入管職員の問題発言

 この問題をめぐって5日に東京・永田町の参議院議員会館で急遽開催された「難民問題に関する議員懇談会」(会長・石橋通宏参議院議員)では、2人の遺族と代理人弁護士も参加して入管庁と外務省へのヒアリングが行なわれた。その場で入管職員は「国賠訴訟の関係者がいるので一切のお答えを差し控える」「特定の行政処分に対して質問するのは行政に対する圧力ではないか」など、被害者遺族が裁判を受ける権利を軽視し、国会議員の国政調査権を踏みにじるような発言を繰り返した。

 古川禎久法務大臣(当時)は同日の定例記者会見で「個別具体的な事案なので回答は差し控える」としつつ「お尋ねのご遺族からの在留資格の変更申請については入管庁から不許可とした旨の報告を受けている」と答えた。

 8日、ポールニマさんとワヨミさんは6月に不起訴処分にされた名古屋入管幹部ら13人の刑事訴追で名古屋第一検察審査会に「ウィシュマさんの映像を御確認の上、報告書に書かれた内容より更に悲惨な事実を御認識いただき、起訴相当の御判断をいただきたい」「本件のように、明らかに起訴されるべき事件で起訴されなかった場合、必ず同様の死亡事件は繰り返される」などとする申し立てを行なった。

(『週刊金曜日』2022年8月19日号)

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