「国葬」当日、安倍元首相銃撃事件を描いた劇映画上映会は超満員
岩本太郎・編集部|2022年10月9日7:00AM
東京・千代田区の日本武道館で安倍晋三元首相を悼む「国葬」が始まるのと同日同時刻の9月27日午後2時、会場から西へ約7キロ離れた渋谷区内のライブハウス「ロフト9」で、その安倍元首相を7月に銃撃した山上徹也容疑者を(無論フィクションで)描いた劇映画『REVOLUTION+1』(足立正生監督)緊急上映会が超満員の観客、駆けつけた大勢の報道陣らの前でスタートした。
今年83歳、1960年代以降に若松孝二氏らとともに映画制作に携わり、ドキュメンタリー『赤軍 ―PFLP 世界戦争宣言』(71年)制作後に日本赤軍メンバーに参加し国際手配された(後に逮捕・服役)経験も持つ足立氏は、7月の銃撃事件発生直後から脚本担当の井上淳一氏らとともにこの映画の制作を開始。製作費は700万円強、撮影期間は8日間という、低予算かつ短期決戦で2カ月半後の上映へとこぎ着けた。
ただし、映画自体はまだ完成していない。足立氏は当初からこの作品を国葬実施と同じタイミングで公開することを目標としており、まず今回は約50分間の緊急特別版を前記の渋谷を含む全国13カ所で9月26~29日に公開し、追加撮影分も加えた約90分間の完成版を今年末から公開する計画を立てた。
とはいえ内容はもとより足立氏の経歴もあってか情報が世に出るや「テロを奨励するのか」などの批判がネットを中心に相次いだ。今回の上映館の一つだった鹿児島市の映画館は、入居する商業施設に抗議があったことをきっかけに上映中止を決定したという。
国葬当日の渋谷での緊急上映会でも不測の事態が懸念されたが、それを笑い飛ばすかのように足立氏は上映直前、国葬会場の武道館周辺へ赴き、そこからネット中継でスクリーン越しにあいさつするという演出で観客の喝采を浴びていた。
上映終了後に渋谷まで戻り観客の前に姿を見せた足立氏は「いかに日本の政治の底が抜けているかわかった。こういう国葬をやることでしか、虚ろな自分たちを埋められないのだという実態がよく見えた」と、会場周辺で取材した様子もまじえながら語った。