「国葬」当日、安倍元首相銃撃事件を描いた劇映画上映会は超満員
岩本太郎・編集部|2022年10月9日7:00AM
「テロ奨励」批判に反論
休憩を挟んで足立、井上、栗原康(政治学者)、ダースレイダー(ヒップホップミュージシャン)の、計4氏によるトークセッション。映画の内容や、世間からの反響についての議論が交わされた。
映画の具体的な内容についてはここでは詳報を避けるが、暴力的な手段の賛美だと捉えられそうな描写は(少なくとも筆者が実際に見た限り)存在しない。銃撃事件の容疑者を賛美する内容でもない。
「(映画を)観ていない人たちが騒いでいる」とダースレイダー氏。井上氏も上映中止問題に関連して「観ずに批判するという、最低限の礼節を欠いた行為だけはやめてほしい」と訴えた。
ちなみに井上氏は、この映画の制作を思い立ったきっかけとして次のようなエピソードを語った。銃撃事件後に多くのマスメディアがまだ統一教会という固有名詞も出さずに報じていた時期に、ある記者が同氏にかけてきた電話の中で「ある意味で山上自身も犠牲者だ。昔の若松孝二だったらこれですぐに映画にしましたよね? 今報道ができないなら、これは映画の仕事じゃないですか」と語ったことにたきつけられたのだ、と。
「テロ奨励」などの批判について足立氏は「本来『テロ』とは国家による行為を意味する言葉だった。それが『9・11』以降、さまざまな独立運動やゲリラ活動まで全部『テロ』として括られてしまった」と異議を唱える。ただ、そのうえで映画への批判については「全部引き受けよう」との覚悟も表明。「山上は自分の家族も生活も破壊された。彼を一人で決起せざるを得ないところまで追い詰めたのは一体何だったのか、そこをみんなで考えてほしい」と訴えた。
「死刑囚表現展」の選考委員でもある栗原氏も「殺人鬼と言われる人でも、他者とのふれ合いの中で別の側面が見えてくる」と語り、追い詰められた者を孤立化させぬ「表現」の重要性を強調した。
(『週刊金曜日』2022年10月7日号)