戦時強制労働の史実を伝える「笹の墓標展示館」巡回展
室田元美・ルポライター|2022年10月11日7:00AM
2020年冬、豪雪地帯で名高い北海道の朱鞠内(旭川から北へ約80キロ)で降り続く雪の重みにより築86年の「笹の墓標展示館」(旧光顕寺)が倒壊した(本誌21年8月6・13日合併号参照)。
森村誠一の小説『笹の墓標』のモデルにもなったこの場にはアジア・太平洋戦争中、朝鮮半島から動員され働かされた朝鮮人、日本人の遺骨や記録が展示されていた。1939年〜45年の間、日本各地で70万〜80万人の朝鮮人が強制動員され、うち約14万5000人が北海道に動員された歴史がある。
朱鞠内のダム建設現場などで犠牲になった人々は近くの笹やぶに埋められ、長い年月の間に忘れ去られていた。80年から笹やぶの遺骨発掘が始まり、97年からは日本、韓国、在日コリアン、アイヌ、中国、台湾などの若者たちが共同発掘に携わる「東アジア共同ワークショップ」が開催。
昼は皆で遺骨を発掘し、夜遅くまで対話や交流を続け、時にぶつかり合いながらも信頼や友情関係を育んできた。発掘された遺骨を含む115体は、戦後70年にあたる2015年に市民の手で韓国に里帰りし、ソウル市立墓地に納骨された。
強制労働を語り継ぎ、東アジア市民の交流をさらに育てていく拠点として、ぜひとも笹の墓標展示館を再建させたい……現在、国内外の人々の支援で再生運動が進められている。そして再建を待つ間、朱鞠内でしか普段出会えない犠牲者の遺品やパネル展示、資料などに触れてもらうための全国巡回展が現在行なわれている(北海道、新潟、名古屋、富山、大阪は終了)。
東京展は10月5日〜13日、中央区の築地本願寺第二伝道会館2階で10時〜16時に開催。10日は正午からの追悼法要に続き、朴根鐘氏ら演奏家による追悼演奏、交流イベントも行なわれる。期間中には高橋哲哉さん(東京大学名誉教授)、中沢けいさん(作家)らの講演も予定されている。