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映画『主戦場』の出演者らが上映禁止求めた裁判 控訴審も原告敗訴

北野隆一・『朝日新聞』編集委員|2022年10月12日7:00AM

「慰安婦」問題の論争を扱ったドキュメンタリー映画『主戦場』の出演者5人が、合意に反して勝手に映画を一般公開されたなどとして、日系米国人のミキ・デザキ監督と映画配給会社「東風」に上映禁止や計1300万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が9月28日、東京都千代田区の知的財産高等裁判所(知財高裁)で言い渡された。東海林保裁判長は「映画は原告らの著作権や名誉権を侵害していない」と認定。原告の請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。

9月28日、判決後の裁判所前で勝訴を報告するミキ・デザキ監督(右)。(撮影/北野隆一)

 デザキ氏は大学院の卒業制作で、原告の米国弁護士ケント・ギルバート氏や「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長らに取材し、映画を作った。原告側は「商業映画として一般公開する計画を隠し、学術研究目的のように装った」などとして、デザキ氏が出演者をだましたと主張(①)。また原告の肖像権や名誉権、著作権が、映画により侵害された(②)などと訴えていた。

 判決は①について、デザキ氏の求めで出演者が署名した「承諾書」や「合意書」で「映画の商用公開」も許諾されたと指摘。「デザキ氏が原告らをだまして取材に応じさせたとは認められない」として「詐欺」を否定した。

 ②をめぐって判決は「歴史修正主義者」という言葉が「否定的表現と理解されるとは必ずしもいえない」として名誉権侵害を否定。原告が作った動画の使い方についても「引用として適法」と認定し著作権の侵害を否定した。

 藤岡氏は「合意に違反してもとがめないという、きわめて不当な判決だ」と批判。上告については改めて検討するという。デザキ氏は記者会見し「私が敗訴したら原告らは『慰安婦』に関する主張はうそだったと攻撃する根拠として判決を利用しただろう」と話した。「東風」は判決翌日の29日から、映画のデジタル配信を始めた。

(『週刊金曜日』2022年10月7日号)

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