住み込み家事労働で急死しても東京地裁は労災と認めず
藤田和恵・ジャーナリスト|2022年10月13日7:00AM
長時間にわたる介護や家事労働の末に急死した女性(当時68歳)は過労死だとして、女性の夫が労災を認めなかった国の処分取り消しを求めていた訴訟の判決で、東京地裁(片野正樹裁判長)は9月29日、労働基準法は家事労働者に適用されず、労災かどうかの判断は介護業務だけが対象になるため過重業務には当たらないとして、遺族側の請求を棄却した。
女性は都内の訪問介護・家事代行サービス会社に登録。2015年5月、寝たきりの高齢者のいる家庭に派遣され、24時間拘束の住み込みで1週間にわたって働いた直後に急性心筋梗塞で亡くなった。夫は労働基準監督署に労災申請したが、同法が家事労働者である「家事使用人」を適用除外としているとの理由で不支給決定を受けた(9月16・23日合併号既報)。
地裁は、女性が働いた時間のうち、介護業務は会社に雇われた労働者として従事した仕事、家事業務は家庭と契約した仕事と区別した。過重労働か否かの判断をする労働時間は家事部分を省いた介護部分の1日当たり4時間30分だけが対象と判断。過重業務に就いていたとは認められないとした。
判決を受け、夫は「高齢者のために献身的に働いた妻を労働者として認めてほしかった。社会に不可欠な労働なのに、妻と同じような扱いを受ける人が今後も増える」と批判。代理人の明石順平弁護士は「同じ家で同じ人にサービスを提供しており、区別できない。実態を見ない形式的な判決」と述べ、控訴する方針を示した。
また、家事労働者に同法が適用されない現状について、裁判を支援するNPO法人POSSEは「労働者としての基本的な法的保護を受けられず、無権利状態で働かされている」と指摘。現在、家事労働者に同法の適用などを求めるネット署名(https://www.change.org/save_domestic_woker)を行なっている。
(『週刊金曜日』2022年10月7日号)