刑法性犯罪規定の改正議論 被害者視点を欠いていないか
小川たまか・ライター|2022年10月20日7:00AM
現在、性犯罪に関する刑法の改正について法務省での審議会が進んでいる。だが、性暴力の被害当事者団体や支援団体は議論が「被害者の視点に立った改正」へ向かっていないのではないかという危機感を強めており、10月3日、オンライン記者会見を開き、「不同意性交等罪」の創設や性交同意年齢の引き上げを改めて訴えた。
性犯罪に関する刑法は2017年に110年ぶりに大幅改正されたが、「暴行・脅迫要件の緩和、撤廃」や「性交同意年齢の引き上げ」「公訴時効の延長もしくは撤廃」など見送りとなった論点が複数あり、当事者団体らの働きかけによって20年に再度改正の検討が始まった。性虐待の被害当事者である山本潤さん(当事者を中心とした団体、一般社団法人Springの前代表理事)も含む専門家が参加した検討会を経て、現在は法制審議会で上記を含む10項目の諮問について議論が行なわれている。
会見では、現在の法制審議会で挙げられている複数の改正案を基に、ヒューマンライツ・ナウ女性の権利プロジェクトメンバーである中山純子弁護士が解説した。
「暴行・脅迫要件」とは、現行の刑法177条で「暴行又は脅迫」を用いて性交したことを強制性交等罪と定めていることを指す。この暴行・脅迫は「被害者の反抗を著しく困難にする程度」とされている。しかし、この立証のために被害者がどれだけ抵抗したかを示さなければならず、恐怖で体が硬直してしまった場合やそれ以上の危害を加えられることを恐れて抵抗しなかった場合に罪に問えないことがある。
審議会では、現行の「暴行・脅迫要件」の代替となる部分について、「次の事由により、その他意思に反して」とするA案と、「次の事由その他の事由により、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて」とするB案が検討されている。