無罪確定後に検事を告発するも不起訴が確定
粟野仁雄・ジャーナリスト|2022年10月26日7:00AM
横領容疑で逮捕・起訴されながら無罪が確定した不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市中央区)の山岸忍前社長(59歳)に「元部下らへの脅迫的な取り調べで虚偽の供述を引き出した」として「特別公務員暴行陵虐」「証人威迫」などの容疑で刑事告発された大阪地検の男性検事2人について、大阪第4検察審査会は9月29日に「不起訴相当」と議決し、2人の不起訴が確定した。
山岸氏は「人生を壊した責任を取らなくていいのか。検察官だったら何をやってもいいのでしょうか」とのコメントを出した。同地検は「コメントを控える」とした。
同地検特捜部は2019年、学校法人明浄学院(大阪府)の理事長(当時)が同校土地取引に際し21億円を横領した事件で共謀したとして山岸氏を逮捕・起訴。裁判で山岸氏は共謀を一貫して否認し、大阪地裁も元部下らの供述の信用性を否定して昨年10月に無罪判決(後に確定)を下した。山岸氏は今年3月に前記検事2人を同地検に刑事告発。6月に不起訴とされたのを受け検察審査会に審査を申し立てたが、「不起訴を覆すに足りる証拠なし」とされた。代理人の中村和洋弁護士は「検事の乱暴な発言、態度は明らか。議決は理解できない」と会見で語った。
山岸氏は国に対しても「違法捜査で248日間勾留された」として約7億7000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した(本誌4月8日号既報)。同裁判では国に取り調べの録音、録画記録の提出を求めたが拒まれ、出された録音起こしの反訳書は黒塗りだらけ。そこに「あなたは会社の評判を貶めた大罪人だ。会社から10億円、20億円ではすまない損害賠償を求められる」などの言葉や、検事が手を振り上げたり机を叩く様子もあるというが、中村弁護士は「これで十分でしょ、と映像や音声を出させない戦略」とみる。山岸氏は「文面では実態はわからない」と、11月にも大阪地裁にデータ提出命令を申し立てる予定だ。
(『週刊金曜日』2022年10月21日号)