政令無視? 支援機構の“暴論”
連載 “日の丸ヤミ金” 奨学金 第13回
三宅勝久・ジャーナリスト|2022年10月30日7:00AM
日本学生支援機構からの「一括請求」をめぐる訴訟は、なおも各地で進行中。そんな中、支援機構が訴状や準備書面などで、予想外の主張を持ち出してきた。
9月29日、東京地裁立川支部の法廷で独立行政法人日本学生支援機構(以下、支援機構)が起こした債権回収訴訟の口頭弁論が開かれた。原告席には支援機構代理人の宇都宮隆展弁護士、被告席に座るのは男性Aさんだ。この日は双方が準備書面を擬制陳述し、書証を調べる予定だった。だが、支援機構側に書類の不備があり手続きは空転、次回に持ち越された。
「私は上に言われたことやっているだけですから。ガキの使いみたいなもんですから」
閉廷後、廊下に出た宇都宮弁護士はAさんにそう弁明した。筆頭代理人は元武富士代理人で支援機構顧問の熊谷信太郎弁護士だ。この“ボス弁”の指示通り行動しているだけだということらしいが、ずさんな印象を受けた一幕だった。
訴えられた側のAさんは、むろん深刻だ。そして訴えの内容に異議がある。支援機構の請求金額は合計約400万円だ。元本375万円に延滞金約25万円。この請求額をはじめ、返還猶予の適用方法や延滞金のつけ方に納得できないと主張している。
確かに、請求されている元本のうち約210万円はまだ返還期日が来ていない。将来にわたって年賦で払う予定のものを、期限の利益(分割で弁済する権利)を喪失させて一括請求している。この状況を一見して、筆者は「違法な一括請求」を疑った。