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岐阜県御嵩町の新庁舎建設計画で疑惑多数噴出

杉本裕明・ジャーナリスト|2022年11月7日7:00AM


 1997年の産業廃棄物処分場建設の是非を問う住民投票で名を知られた岐阜県御嵩町が、今度は新庁舎の建設計画で大揺れだ。

 渡邊公夫町長が役場の移転先として打ち出したのは可児川(木曽川支流)沿いの水田地帯。町民ホールや私立保育園、児童館も一緒に建てる計画だが、土地造成工事開始直前の今年5月、総事業費が約78億円という、3年前の公表時(約41億円)からほぼ倍増となる数字が明らかに。住民8人が10月24日に町に対して住民監査請求を行ない、新庁舎の建設に税金を支出することなどに反対し、税金からの不当な支出を渡邊町長に返還させるように求めている。

可児川(手前)対岸が新庁舎予定地。川際に保育園が建つ計画。(撮影/杉本裕明)

 請求人の1人で、住民組織「みんなでつくるみたけの会」の鍵谷幸男さんは「必要な情報が町民に知らされないまま町長の独断で強引に計画が進められてきた。役場の職員は不利益処分が怖くてものがいえない。白紙に戻したうえで情報を公開し、町民参加の下で計画を練り直すべきだ」と語る。

 発端は2013年に町が現役場庁舎について実施した耐震診断だ。震度6弱の地震に耐えられないとする結果が出たのを受けて、町長が独断で移転・新築を決定。町長支持派の多い議会も追随した(ただし現在は11人の議員中4人が計画の白紙撤回を求めている)。

 移転先として町は当初7候補地を挙げたが、うち3カ所は可児川に近い洪水浸水想定区域にあり、現予定地もそこに含まれていた。役場には災害発生時に対策本部が置かれるため、大抵の自治体では浸水想定区域からは外れた場所に建てられる。しかし御嵩町は「国道21号のバイパス沿いで、将来は民間による開発も期待でき、病院や鉄道の駅も近い。平均2・5メートルの盛土で大丈夫」として現予定地への移転を決定した。

 一方でゼネコンの技術者は「盛土は雨に弱く崩壊の心配がある。造成費用は莫大だ」と指摘する。前記倍増分の多くは水道などのインフラ整備と洪水対策の盛土(最大3メートル)の費用で、候補地検討時に事業費を算出せずに進めたツケが回った形だ。

予定地は副町長の土地

 さらに、筆者が予定地の登記を調べると意外な事実がわかった。同地の地権者の中に寺本公行副町長の名前があったのだ。また、予定地近くには御嵩町が加盟する可茂消防事務組合の御嵩分署も移転するとされたが、同予定地も寺本氏の土地だった。昨年末に所有権が町へ移り、売買を代行した岐阜県土地開発公社から寺本氏に計1379万円が支払われていた。

町内には建設反対の看板が。(提供/御嵩町住民)

 ここでは町総務防災課が虚偽の文書を作成して寺本氏の所有地に誘導した疑いが持たれる。新庁舎予定地選定時の候補地比較表では寺本氏らの土地の浸水想定深度が「0・5メートル未満」とされ、他候補地(0・5~1メートル)より優位。だが、ハザードマップでは前者は「1~2メートル」の場所も混在し、最も不利だった。

 御嵩分署の建設地の選定でも、町は、寺本氏の土地は、国が作成した亜炭鉱の廃坑跡地下空洞の分布図で充填の必要のある「15~30メートル」となっていたのに、充填の必要のない「30メートル以深」と虚偽記載した文書を組合に提出。「15~30メートル」の他の候補地よりも有利に見せかけた。ところが土地売却後のボーリング調査で空洞が見つかり、充填に1億円かかると判明。組合に加盟する他の自治体の市長らが反発し、計画は中断された。

 新庁舎の設計を東畑建築事務所に決めたやり方も疑問だらけだ。5社からの企画案を評価した委員会は寺本氏が委員長、役場幹部が委員の過半数を占め、専門家はゼロ。議事録を見た建築家は「素人が好き嫌いを述べただけ。業者選定後に行なわれた外観の大幅変更や、ホールの木造から鉄筋RCへの大転換はありえない。審査で間違いなく落ちるはずだから」と語る。筆者は同事務所に質問文を二度送ったが、回答はなかった。

 町内には誰とはなしに立てられた計画反対の看板が今や約40本。「みたけの会」もそこに参加し、看板設置に本腰を入れるという。

(『週刊金曜日』2022年11月4日号)

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