ホームヘルパー訴訟 原告請求を棄却 東京地裁判決
西村仁美・ルポライター|2022年11月17日7:00AM
登録型ホームヘルパー3人が、訪問介護現場における労働基準法違反状態を正すために厚生労働省が規制権限を行使しなかったのは違法だとして2019年に提起した国家賠償訴訟で、東京地裁(高木勝己裁判長)は11月1日、原告の請求を棄却する判決を下した。
判決は被告である国の主張を全面的に支持。厚生労働大臣に監督指導を行なうことができるとの規定は労働基準関係法令や介護保険法にもなく、労働基準監督署は後見的立場から事業所を監督、指導する機関だと指摘。労働条件の改善は各事業所でなされるべきであり、仮に事業所の努力では不可能だとしても、そこで厚労大臣や労基署がいかなる規制権限を行使すべきかについて、原告らには具体的な主張がない――などとした。
当日は国側は欠席で、裁判長は主文のみ言い渡した後、1分ほどで他の裁判官2人とともに退廷。傍聴席から「不当判決です。理由を言ってください」など抗議の声が次々に上がった。判決後の報告会で原告の藤原路加さん(66歳)、伊藤みどりさん(70歳)、佐藤昌子さん(67歳)は三者三様に悔しさをにじませながらも、思いはすでに控訴審にあることを表明。
「ホームヘルパーの『ケア』を、社会を支える柱のような位置づけにしていきたい」(藤原さん)
「介護業界は崩壊の危機。国は『高齢者の人権』を唱えながら、働く介護労働者の人権をないがしろにしている。そのことをもっと強く訴えていきたい」(伊藤さん)
「国による小手先の制度設計改革では現状は何も変わらない。私たちが望む介護の仕組みを、私たちで作り上げていくようにしなければ絶対に変わらない」(佐藤さん)
と、次の裁判への決意を述べた。原告代理人の一人、大棒洋佑弁護士も「今回は原告本人たちの証人尋問なしに判決が下された。そのことを一つの材料として主張していきたい」などと抱負を語った。
(『週刊金曜日』2022年11月11日号)