同性婚訴訟 東京地裁判決は「違憲状態」と判断
飯田光穂・ライター|2022年12月10日7:00AM
同性との婚姻を認めていない現行法(民法や戸籍法)は、法の下の平等を定めた憲法14条や家族生活における個人の尊厳・両性の平等を定めた憲法24条に違反しているとして東京都内在住の同性カップルら8人が国に損害賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所(池原桃子裁判長)は11月30日、「違憲状態」との判断を下した。ただ、結論としては「合憲」とし、損害賠償の訴えを退けた。
同性婚の実現を求める同様の集団訴訟は、全国5カ所、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡で起こされている。東京地裁判決の前に出された判決は二つ。2021年3月に札幌地方裁判所が〈同性愛者に対し、婚姻により生ずる法的効果の一部ですらも享受する法的手段を提供しない現行法は、立法府の裁量の範囲を超えたもの〉として憲法14条1項違反と判断。憲法24条には違反しないとした。しかし、22年6月に出された大阪地方裁判所の判決では〈現行法はすべて合憲〉として原告の訴えを退けた。
東京地裁の判断は札幌とも大阪とも異なり、「家族として法的保護や社会的な認証を受けることは個人の尊厳に関わる重要な人格的利益で、同性愛者にとっても同様」などとした上で、「特定のパートナーと家族になるという希望を有していても、同性愛者というだけでこれが生涯を通じて不可能になることは、その人格的生存に対する重大な脅威、障害であるということができる」と明言。配偶者の選択や婚姻・離婚などの家族に関する事項について個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して法律を制定しなければならないと規定する憲法24条2項に違反する状態にあるとした。
ただし「憲法24条2項に違反する状態だが立法裁量に委ねられており、違反と断ずることはできない。憲法14条1項、憲法24条1項には違反しない」とし、全体としては違憲としていない。
今回の判決は「個人の人格の尊厳」を重視した点が、札幌地裁や大阪地裁とは大きく異なる。また、大阪地裁では憲法14条について婚姻の目的を「自然生殖」「子を養育する関係が社会の自然かつ基礎的な集団単位」とし、子どもを養育しない異性婚者さえ排除するような文面があったが、東京地裁は婚姻の目的を生殖に限定しなかった点は評価できる。