強制動員朝鮮人への謝罪・補償問題 平野啓一郎さんと中沢けいさんが語ったこと
本田雅和・編集部|2022年12月11日7:00AM
徴用工は今の技能実習生
日本政府は1995年の村山談話以降、朝鮮への植民地支配に対して言葉では「反省と謝罪」を繰り返し、過去の朝鮮人強制連行訴訟では日本製鉄、日本鋼管、不二越などの企業が被害者と和解し、解決金を支払っている。中沢さんは「植民地支配を反省し、被害者と対話することが豊かな関係を築く一歩のはず。かつて徴用工は2年間教育して立派な『帝国臣民』にするという目標があったと聞いたが、これって今の外国人技能実習生と同じじゃないですか? 日本は植民地政策の失敗から何も学んでいない」と論難した。
平野さんは「僕は中沢さんより、もっと悲観的だ」と話しだした。日中韓3カ国の作家らとの文化交流を進めてきたが、「政治関係がどんなに酷くなっても文化は別だと思いたいが、政治状況が悪化すれば文化も傷つく。ここ数年、韓国で日本の文学作品の読者は確実に減っている」と言う。
重大な政治問題になった大法院判決なのに、ウェブサイトも含め全文翻訳を載せた新聞社はなかった。仮訳で判事の個別意見・補充意見も含めて全文を読んだ平野さんは「国会議員も含め多くの日本人は読みもせずに、特にテレビは『韓国人はウソつきだ』『約束を守らない国民だ』などというコメンテーターや政治家の罵声を公共の電波に乗せていた。まずは何が問題で、相手の主張が何なのかを正確に知ることから始めるべきだ」とメディアの責任を問うた。
集会には、作家の高村薫さん(69歳)も「日韓の棘を抜くために」と題して意見を寄せた。
「個人請求権は消えていない(略)。謝罪と救済がかくも政治化してしまった状況から抜け出すには『債務者側の自発的な対応』しか道はありません」
(『週刊金曜日』2022年12月9日号)