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「袴田事件」再審請求 半世紀の闘いはついに最終ラウンド

粟野仁雄・ジャーナリスト|2022年12月18日7:00AM

12月5日、東京高裁に入廷する袴田ひで子さん(左から3人目)と弁護団。左端は日本プロボクシング協会「袴田巌支援委員会」の新田渉世委員長。(撮影/粟野仁雄)

 1966年6月に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で味噌製造会社の専務宅の一家4人を殺したとされて死刑が確定し、再審開始決定で釈放されながら決定が取り消された元プロボクサー袴田巖さん(86歳)の第2次請求差し戻し即時抗告審が、12月5日午後に東京高裁(大善文男裁判長)で行なわれた。この日、巖さんは初めて3人の裁判官と面談した。

 争点は「5点の衣類」の血痕の色の検討だ。事件の約1年2カ月後に味噌タンクから見つかった衣類が袴田さんの犯行着衣かどうかの確認のためだ。警察の証拠では血痕は赤みを帯びていたが、弁護側は「味噌に長期間漬かれば黒く変色するはず」と主張してきた。

 弁護団は意見陳述で、12月2日に提出していた最終意見書をパワーポイントで説明。味噌漬け実験結果や専門家の鑑定から「ヘモグロビン(血液の成分)が分解、酸化して赤みを消失させ、血液のアミノ酸やたんぱく質も味噌の成分と化学反応を起こして変色が進行する」と説明。さらに「検察実験は、真空状態にしたり、乾燥した血痕を使うなど赤みが残りやすい条件にしている」「時間が経てば赤みがなくなることは検察実験でも証明された。発見直前に何者かが衣類をタンクに放り込むなど、証拠の捏造が窺える」とした。

 一方の検察側は陳述せず、提出済みの意見書では「弁護側実験は限られた条件下で得られた一つ一つの結果にすぎない」と指摘。「実験では一部に赤みが残った。化学反応が起きにくくなり赤みが残りやすくなった可能性がある」として再審開始決定を否定し、巖さんの再収監も求めている。

 最高裁から差し戻された際の「宿題」ではなかったが、弁護団はこの日、2018年に東京高裁(大島隆明裁判長)が再審開始を取り消した際に信用性を否定した、衣類の血痕のDNAについての弁護団側鑑定の信頼度も訴えた。角替清美弁護士は「再審開始決定が正しいかどうかを審理する場なので、DNAも他の要因も審理対象になる」と会見で説明した。

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