「勝訴しても夫は帰ってこない」 新潟市水道局の職員パワハラ自死裁判
牧内昇平・フリーランス記者|2022年12月19日2:01PM
双方控訴せず判決確定へ
判決言い渡し後、男性の妻(53歳)は「勝訴しても夫は帰ってこない。水道局には心の底から反省してほしい」と話した。
遺族側弁護団は「5割の過失相殺や直接的なパワハラが認められなかったことは大変不当だが、『過大な要求』というパワハラの類型が実質的に認められた点は評価できる」としている。厚生労働省はパワハラについて「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6類型を示している。判決は水道局が困難な業務を一人で担わせ、必要な指導や援助をしなかったことを指摘しており、厚労省のパワハラ類型のうちの「過大な要求」に該当するというのが弁護団の見方だ。
遺族と新潟市の双方が控訴の意思を示していないため、判決は確定する。今後は市(水道局)が遺族にどのような対応をとるかがポイントになる。
遺族は▽新潟市長や係長本人が謝罪すること ▽再発防止策について遺族側と協議すること ▽水道局がパワハラを否定する根拠として使っている内部調査の録音テープの開示――などを求めている。これに対して水道局は、再発防止策の協議には応じる姿勢を示しているものの、他の要求項目については「謝罪は水道局長が行なう」「録音テープの公表は難しい」などと回答している。
控訴しない方針を明らかにした11月28日、水道局の佐藤隆司局長は「これ以上争う材料がないので控訴しない」などと述べた。こうした言動に対し、遺族は「反省の気持ちが見えない」と強く憤っている。男性が亡くなってから15年以上過ぎた。水道局はこの間、組織の責任を否定し、遺族を苦しめてきた。そのことを考慮すれば、水道局には遺族の求めに最大限応じる責務がある。
(『週刊金曜日』2022年12月16日号)