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「あなたが許容しないなら周囲もあなたを許容しない」と裁判官 大阪コリア国際学園放火裁判は執行猶予付き

 粟野仁雄・ジャーナリスト|2022年12月20日7:00AM

SNSの影響だけなのか

 裁判で検察は「特定の政治思想や国籍、信仰を有する者への歪んだ憎悪心から犯行に及んでいて、動機は正当化できず、酌量の余地はない」として懲役3年を求刑。被告人の弁護人は「被害者に向けていた敵意は根拠がなく、理不尽だったことを理解し、反省している」と刑の猶予を求めていた。昨年8月に在日朝鮮人の居住区ウトロ(京都府)に放火した男性は懲役4年の実刑判決を受けていた。

 梶川裁判官は、被害者側が重視していたヘイトクライムや差別問題については言及しなかった。会見で同学園の金淳次理事長は「判決は差別犯罪、ヘイトクライムであることを見過ごしており不十分。検察官の論告は犯行がヘイトクライムによるものと評価していたが、それが判決に反映されず大変遺憾」などと話した。

 被害者弁護団も「判決には差別という言葉もヘイトクライムという言葉もない。検察がしっかりと糾弾したにもかかわらず執行猶予を付けたことは、ヘイトクライムをやっても大丈夫という誤ったメッセージを社会に与えかねない」などと指摘した。

 なお、辻元氏は8日、記者団の取材に対し「暴力に屈して言論を萎縮させたり政治活動を控えることがあってはならない。国会でどう取り組んでいくか、問題提起したい」などと答えた。

 この日、白い半袖シャツ姿の太刀川被告人に判決を言い渡した梶川裁判官は「あなたが自由に生きてきたのは、そうすることを周囲が許容したからです。あなたが許容しないなら周囲もあなたを許容しない。自分に返ってきますよ」と説諭した。ネット情報の影響が大きいとみたのだろう。しかし被害者弁護団の冨増四季弁護士は「ウトロ事件と共通するのはSNSなどで情報を得てから標的を定めるまで2週間くらいしかないこと。そうした情報の影響だけとは言えないのでは」と推測した。

 金理事長は被害者にもかかわらず被告人を「太刀川君」と呼んできた。「SNSではペンネームで相手を中傷してきた太刀川君が今後、事件をしっかり振り返り、この裁判で感じたことをしっかりと見つめ直して実名で発信していくことを期待したい」と話した。

 (『週刊金曜日』2022年12月16日号)

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