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富山地裁の性暴力事件・無罪判決に抗議の署名が5801筆

小川たまか・ライター|2022年12月26日7:00AM

 富山地裁での裁判員裁判で今年5月13日、強制性交等致傷罪に問われた20代の男性に無罪判決が下されたことに関し、富山県内で原告を支援する「『性暴力のない社会』をめざす会」(以下、めざす会)のメンバーが、判決に抗議する5801筆の署名を12月12日に名古屋高裁金沢支部へ提出した。

署名を提出した小林涼子さん(前列中央)ほか「『性暴力のない社会』をめざす会」メンバー。(撮影/小川たまか)

 同判決については検察側が控訴しており、裁判は高裁へ続くことになっている。起訴の内容は2020年11月、富山市内のホテルで男性がベッドで寝ていた女性(Aさん)に背後から抱きついて性交するなどし、その際に全治約1週間の会陰裂傷を負わせたというものだ。Aさんと男性はオンライン勉強会を通じて知り合い、複数の男女とともに事件当日に初めて会った。ホテルで疲れて寝てしまったAさんを置いて他の男女が部屋を出たあと、男性と2人きりになっていたという。

 一審では、Aさんの証言を信用できるとした検察に対し、男性の弁護人は「膣内に手指を入れたものの性交はしていない」「性的行為には(Aさんの)同意があった」と主張。判決ではAさんと男性のどちらの証言も具体性、迫真性があるとしながら、Aさんの証言の信用性を重視することはできないとした。理由として、①Aさんが事件後に友人に対して自分を責めるようなメールを送っていた ②初対面の異性と2人きりになったことに気づいた時点で部屋を出なかったことは不自然であり、Aさんが男性に好意を持っていた可能性がある ③Aさんは「たぶん」という表現を用いて話すことが散見され、曖昧な部分が少なくなかった――などが挙げられている。

 一審を傍聴した人によれば、同裁判では裁判員6人のうち5人が男性で、そのうち3人は被告人の男性と同年代に見えたという。また、富山地裁の裁判員裁判で無罪判決が出たのはこれが初めてだ。

 「めざす会」はこの判決が「性被害に直面した被害者の心理・行動」をまったく無視していると指摘。被害者が自責の念を感じたり、助けを求められなかったり、重要な部分を思い出せなかったりするのは被害者特有の心理であり、「十分合理的であるにもかかわらず、証言の信用性を否定する方向で判断されている」と抗議している。抗議署名は今年6月から始まり、自筆で2838筆、オンラインで2963筆(どちらも提出時)が集まった。同会の小林涼子さんは「全国から署名が集まった。富山県内よりも他県からの注目が強いように感じている」と話した。

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