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民意の可視化を 原発推進政策へのパブコメ
FoE Japan 満田事務局長に聞く

編集部|2023年1月4日3:31PM

――第1のGX基本方針、第2の原発の行動指針、第4の原発の基本的考え方では、エネルギーの安全保障のために原発を推進するとしていますね。
はい。「ロシアによるウクライナ侵略が発生し、世界のエネルギー情勢は一変した」とし、エネルギー価格の上昇、電力需給ひっ迫などによる人々の「電気が足りない」という心理をあおっているかのように思えます。

しかし、原発は決して「エネルギー安全保障」に資するわけではありません。燃料となるウランは、化石燃料と同様海外に依存しており、国際情勢によって左右されます。原発がテロや戦争のターゲットになる可能性は以前から指摘されてきましたが、ロシアのウクライナ侵攻および原発施設への攻撃により、その懸念が現実のものとなりました。

GX基本方針では、一応、再エネや省エネなんかについてもふれていますが、原発については、やる気満々の姿勢を示しています。実質的には、衰退していく原子力産業にムダ金を投じることになります。「次世代革新炉」などというと華やかに聞こえますが、私たちは、かつて夢の原子炉と言われた「もんじゅ」に1兆円以上の国税を投じた手ひどい失敗を思い起こすべきでしょう。

――電力不足で原発もやむなしと考えている人も多いようです。
そもそも電力需給のひっ迫イコール電力不足ではありません。異常気象などにより通常の予想を超えた需要が発生し、電力需給の調整が間に合わないときにも発生します。必要とされているのは、柔軟に電力の需給バランスをとっていくための制度や仕組みづくりです。

原発はたしかに一基あたりの出力が大きい電源です。しかし、止めたり、動かしたりすることが簡単にはできず、出力調整が難しいという特徴もあります。また、トラブルが多く、いったん急停止すれば広範囲に大きな影響をもたらします。地震やトラブルで止まれば、かえって需給ひっ迫リスクを高めてしまうのです。

何万年も管理が必要な解決不可能な核のごみを生み出す、原発の価格は世界的にみても高い、事故のリスクを考えれば、原発に国税などの公的リソースを費やす合理性はありません。むしろ、省エネや再エネなど本当に必要な対策を阻害します。

――第3の「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要」というのはどういう内容でしょうか。
もっとも問題なことは、この文書には書いてありません。ポイントは、原発運転期間を原則40年とする現在の規定は原子炉等規制法から削除され、休止期間を運転期間から除外することを可能にした上で電気事業法に移されるということです。つまり認可権限を、原子力規制委員会から推進側の経済産業省に移すわけです。

この文書は、原発の運転期間を60年以上にすることを前提とし、その上で、30年を超えた原発について、原子力規制委員会がどのように安全確認を行なっていくかという内容です。以前から、運転期間30年を超える原発に対しては高経年化技術評価制度として、10年ごとの審査が行なわれていました。今回提案されている制度は、この延長線上です。運転期間を原則40年とする現行のルールを緩める隠れ蓑でしかありません。

――山中伸介委員長は、運転期間の上限に関する規定は「利用側の政策」としていますが…。
2012年、福島第一原発事故を踏まえ、原発の利用と規制の分離や安全規制の強化が議論されました。それまで明確な規定がなかった原発の運転期間の上限について、「原則40年、1回に限り、原子力規制委員会が認める場合は20年延長できる」として、安全規制として原子炉等規制法に盛り込まれました。この同法の改正は議員提案され、与野党合意のもとに成立したのです。

――FoE Japanでは1月に10回ものパブコメセミナーを企画していますね。
今回のGX基本方針をはじめとした4文書は、原発回帰への重大な政策転換です。このままでは民意なきまま、閣議決定を経て、国会で決まってしまうでしょう。私たちは、一つでも多くの意見を出すことを手助けすることによって、民意を可視化することに貢献したいのです。岸田政権にブレーキをかけることはまだ可能かもしれません。

とはいえ、パブコメが結構ハードルが高いのもまた事実です。提出自体はそれほど面倒ではないのですが、書き始めるきっかけがないと結局書かずじまいになってしまいます。パブコメセミナーでは、四つの文書のポイントを解説し、「その場で、みんなで、パブコメを書いてみよう」という企画です。

一人だと億劫でも、みんなの意見をきいたり自分の意見を話したりすると不思議とハードルは下がってくるもの。また議論の中で新たな気づきがあるかもしれません。多くのみなさんに参加していただけると幸いです。


※パブコメの出し方やパブコメセミナーの詳細はこちらから。
https://foejapan.org/issue/20221226/10867/

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